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無鉛和絵具の開発
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■九谷焼技術センター ○木村裕之 |
九谷焼は石川県を代表する伝統産業の一つであり,高い透明感と独特の色調を持つ「九谷五彩」と呼ばれる色鮮やかな和絵具による装飾がその大きな特長として知られている。九谷焼に限らず陶磁器の上絵具には,その成分として鉛(酸化鉛)を含んでおり,鉛は酸性の水に触れると僅かながら溶け出すことが知られている。しかしながら,鉛は重金属であり,人体に影響を与える。このため,食品衛生法により「飲食器からの鉛溶出規格基準」が定められており,2000年に国際的な規格(ISO)の鉛溶出基準の改正(規制値が強化)が行われ,国内的にも食品衛生法の改正が予想されている。
鉛を陶磁器に使用する技術については,紀元前のメソポタミアやエジプト等での使用が確認されており,2000年以上の長い歴史を持っている。近年,環境や消費者の安全性に対する意識の向上のため,多くの分野で鉛を使用しないという動きがある。例えば,電子部品等の組み立てに使用するハンダにも鉛(金属鉛)が使用されている。しかし最近では鉛を全く含まないハンダが使用されており,無鉛ハンダ製品が製造されている。無鉛化は,時代のそして世界的な流れと言え,このような情勢から,石川県工業試験場では鉛成分を全く含まない和絵具の開発を行った。九谷焼独特の高い透明性と色調は鉛無しでは難しいと言われてきたが,従来の鉛を含んだ絵具に引けを取らない無鉛和絵具の開発を行った。
注:鉛溶出とは,4%酢酸溶液(食酢と同濃度)を食器に満たし,22±2℃の部屋の中に24時間静置することにより,酢酸溶液中に溶け出してくる鉛のこと。
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