漆塗りグラスの開発  ―耐熱水性の良い無機材料への漆塗り方法―

 県内の漆器業界では、椀や重箱等の木製漆器の需要が低迷する中で、ガラス製品や金属製品に漆や蒔絵を装飾するなど、従来の木地以外の材料に漆を用いた新商品の開発が進められています。しかし、産地企業の多くが使用しているビニル系の下塗り剤(プライマー塗料)を用いる方法や、漆を材料表面に焼付ける方法では、その付着性と耐熱水性の低さが課題となっていました。

 そこで、工業試験場では、これらの問題を改善するため、各種類の下塗り剤を用いた漆塗り方法について研究を行いました。その結果、エポキシ系、アクリルシリコン系、シランカップリング剤を添加したウレタン系下塗り剤を利用することにより、熱水による付着の耐久性試験で、漆の剥離が見られるまでの時間を、従来の4倍以上に延ばすことができました。

 さらに、漆塗りグラスの開発を支援するため、ワイングラスへの漆塗り工程を確立し、業務用食器洗浄機で600回洗浄しても問題のないことが検証されました。

 今後も、研究で得られた漆塗り技術を応用して、新しい漆器の開発を支援していきます。


食器洗浄機による漆塗りグラスの洗浄試験結果

 

担当:繊維生活部 梶井紀孝(かじい のりたか)

専門:漆器製造、工業意匠

一言:漆器の開発に関するご相談をお待ちしております。