快削性セラミックスの結晶制御技術の研究  ―微細加工に適した高快削性材料の実用化に向けて―

 快削性セラミックスは、機械加工性とともに電気絶縁性、断熱性に優れていることから半導体検査用に利用されています。更に、近年半導体の高密度化に伴い、より微細な加工特性が求められています。工業試験場で開発した快削性セラミックス材料は、母材であるガラス中にマイカ(雲母)結晶を析出させることで優れた加工特性を発揮するものです。この材料の加工特性はマイカ結晶の量や大きさに依存するため、加工特性の向上には微細なマイカ結晶を多数析出させる必要があります。

 工業試験場では、マイカの結晶化工程において圧力をかけながら熱処理を行うこと(HIP)によりマイカ結晶を微細化させる技術(特許出願中)を開発しました。マイカ結晶成分を増やした組成でのHIP結晶化処理を行いました。その結果、2〜3μmのマイカ結晶を多く析出させ、結晶数を1.7倍に増加させることで、緻密化できることが分かりました(図1)。この結晶化技術により、径50μmで間隔60〜70μmの微細な穴開け加工が可能な材料を開発することができました(図2)。現在、技術移転先である(株)フェローテックセラミックスと共同で実用化に向けて取り組んでいます。


図1 快削性セラミックスの結晶組織

図2 微細穴加工サンプル

 

担当:化学食品部 佐々木直哉(ささき なおや)

専門:無機材料、陶磁器、地球科学

一言:約20年前に工業試験場で開発した材料のさらなる高性能化を目指し研究開発を進めています。