環境配慮型軸受銅合金の研究  ―鉛青銅代替合金の開発を目指して―

 青銅に10%前後の鉛を含有させた鉛青銅鋳物は、油圧ポンプやディーゼル機関等の高速、高面圧用途の軸受やライナー等に広く使用されています。しかし近年、廃棄物からの有害物質の溶出による環境への影響が指摘され、電子機器や自動車をはじめ、各種製品において鉛やカドミウムなど特定有害物質の含有を禁止・減少させる動きにあり、産業機械メーカからは鉛フリー代替鋳物の開発が切望されています。

 工業試験場では平成18年より、日本非鉄金属鋳物協会傘下企業と共同で、工業的に最も多用されている鉛青銅CAC603の環境配慮型代替合金の開発に取り組んできました。これまでに非金属晶出相の分散や共析変態を利用した金属組織制御などにより、CAC603を上回る耐焼付性(PV>3000MPa・m/min)や耐摩耗性を持った青銅鋳物の合金系について鉛フリーと低鉛(3%以下)の2種を開発し、現在、メタル軸受や油圧ポンプ摺動部品などによる信頼性や耐久性について実証試験を行っています。下図は鋼鉄軸を1500rpmで回転させ、2時間の円筒摩耗試験を行った後の軸受内面の状態を示したものですが、鉛青銅では鉛の塑性流動で油溝がふさがり焼付いてしまったのに対し、開発合金では鉛フリー系、低鉛系いずれも良好な軸受性が得られました。

 今後は、工場の生産炉での実証試験、機械メーカでの耐久性試験等、製品化に向けた支援を行っていきます。


試験後の軸受内面(軸径40mm、面圧4.2MPa)

担当:機械金属部 舟木克之(ふなきかつゆき)

専門:金属材料、材料強度

一言:ローカル技術に新しい息吹を。新たな発想で次世代材料の開発を支援します。