産業用繊維製品の評価機器について  ―北陸の繊維産地を支える―

 北陸繊維産地では、一般衣料用途から付加価値の高い非衣料・産業用分野へと進出することで、国際分業への対応を図ってきました。今回、工業試験場では産地支援のため、産業用繊維製品の評価を中心とした機器を新たに導入しましたので、ご紹介します。

1)デジタルマイクロスコープ

 通常の光学顕微鏡で拡大観察した場合、繊維製品のような凹凸の大きな試料ではピントが一部にしか合いません。 しかし、本機では焦点の合った画像を合成することにより、深度のある鮮明な画像が得られます(図1)。また、立体的な表示や3次元計測も可能ですので、形状把握が容易です。 もちろん繊維だけではなく、電子部品の観察や異物分析等にも大変有効です。


図1 デジタルマイクロスコープによる観察例

2)迅速昇温型熱分析システム(DSC)

 合成繊維やプラスチック等の熱的特性(ガラス転移挙動、融点、融解熱等)の測定・評価に使用します。例えば、織物の濃淡欠点の原因を、結晶化度の差に由来する融解熱の違いで解析したり、プラスチック樹脂のグレードの判別を融点等のわずかな差異から判断したりすることができます。

3)引張試験関連ジグ

 合成繊維やスーパー繊維の織物、編物、組物を用いた非衣料分野においては、開発される繊維製品は形状が複雑で、かつ高い強度が要求されます。そこで、試料形状や試験方法に適した特殊なジグを用意することで、引張・破裂・はく離等の様々な強度試験に対応できるようになりました(表1)。

表1 導入した引張試験関連ジグ

4)織物UVカット性測定装置

 布やフィルムの紫外線(UV)カット性能を評価する装置です。国内標準規格である「アパ対協法(アパレル製品等品質性能対策協議会で定められた方法)」に対応した測定が可能です。参考として、2種類の織物(未加工布、UVカット加工布)について測定した結果を図2に示します。このUVカット加工布の場合、未加工布に比べて、波長315〜400nmのUV-A光(地表に届く紫外線の90%以上を占め、肌の老化を早めると言われている光)のカット率が特に高くなっていました。さらに、紫外波長全域(220〜400nm)における平均カット率は、UVカット加工布では97%となり、未加工布の80%に比べて高い値であることも分かりました。


図2 織物UVカット性測定装置による測定例

今回紹介した機器の他にも、様々な評価機器を取り揃えておりますので、お気軽にご相談ください。

担当:繊維生活部 神谷 淳(かみたにじゅん)

専門:繊維物性、有機化学

一言:工試の利用をお待ちしております。