有機酸分析計の活用事例  ―食品の酸味の正体は?―

 近年、「食の安全・安心」が求められつつあり、味や香りを特徴づける食品成分を明らかにすることは、食品を正しく理解するために大変重要です。その指標となる成分として、アミノ酸、有機酸、核酸などがあり、食品の個性をつくっています。このうち、有機酸は、主に酸味として感じられる成分で、果実類に含まれるクエン酸などのように爽快感ある酸味を呈するもの、貝類のコクとなっているコハク酸、発酵食品の渋みある酸味を醸し出す乳酸などがあり、味や香りを特徴づけています。このように、味覚や嗅覚で感じられる酸味について、その組成と含有量を測定することができる装置が有機酸分析計です。

 工業試験場では、有機酸分析計(ICS-1500、日本ダイオネクス(株)製)を導入したので、その活用事例を紹介致します。この装置は、液体試料を分離カラム(イオン交換樹脂)に通して、その通過時間の差により各有機酸成分に分離します。次に分離した各有機酸の電気導電率を検出し、標準物質との比較によって濃度を算出します。

 下図に、日本酒の分析例を示します。日本酒に含まれる有機酸は、通過時間の短い順に検出され、種類と含有量が明らかになります。この分析結果により、日本酒には様々な有機酸が含まれることが確認でき、また、この日本酒は、リンゴ酸を多く含んでいることから、酸味に特徴があることもわかりました。

 この装置は、液体試料に限らず、固体試料についても成分を抽出することにより分析が可能です。また、食品に限らず、廃水など有機酸を含む試料であれば分析が可能です。是非ご依頼下さい。


日本酒の有機酸分析結果

担当:化学食品部  武 春美(たけはるみ)

専門:食品化学、食品加工

一言:食品の味や香りとなる成分を明らかにしてみませんか?