微生物を用いた土壌修復技術  ―バイオレメディエーション先進国の調査より―

 バイオテクノロジーの先進国であるアメリカでは、微生物を利用した土壌修復が積極的に行われています。ここでは、昨年度、カリフォルニア州のスタンフォード大学で調査した土壌修復技術を紹介します。

 土壌の汚染物質は、主に塩素系有機溶剤、重金属、石油類があげられます。塩素系有機溶剤は、工業製品の洗浄などに使用されていましたが、溶剤が漏洩し、土壌汚染を引き起こすことがあります。この汚染土壌は微生物の分解作用で修復されますが、ある種の溶剤は分解の際に有毒物質となり、修復が進みませんでした。スタンフォード大学では有毒物質を発生しない微生物を発見し、この問題を解決しました。

 また、アメリカのウラン鉱脈で、ウラン廃液の漏洩による土壌や地下水の汚染事故がありました。現在、この修復には、スタンフォード大学と企業が連携し、国家プロジェクトとして取り組んでいます。ここでは微生物の還元作用でウランを毒性の強い状態から毒性のない状態に変化させて修復を行っています。

 アメリカでは、このように微生物を利用した土壌修復が盛んに行われていますが、日本ではまだまだ進んでいないのが現状です。現在、工業試験場ではA重油を分解する微生物の探索に取り組んでおり、いくつか有用な菌株を分離しました。今後は、県内企業を中心とした土壌修復ネットワークを作りながら、これらの微生物を活用していきたいと考えています。


研修でお世話になったサンティアゴ教授

担当:化学食品部 井上智実(いのうえともみ)

専門:微生物工学

一言:世界中で微生物の利用が広がっています。