ナノ炭素硬質膜の可能性調査  ―NEDO平成18年度地域研究開発技術シーズ育成調査―

 ダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜は、高硬度、低摩擦係数などの特徴を持つことから工具や金型などの摺動部材への適用、さらにカミソリ刃やペットボトルなどの民生品への実用化が急速に進んでいます。しかし、製品に多用されるアルミニウム合金を切削する工具にDLC膜を被覆する場合、皮膜の硬度不足のため利用が困難でした。

 そこで工業試験場では、潟Iンワード技研と共同で、まったく新しいナノ炭素硬質膜(水素フリーDLC膜、ナノダイヤモンド膜、ハイブリッドナノダイヤモンド(HND)膜)を切削工具にコーティングする技術を開発し、アルミニウム合金のフライス切削試験等を通じて実用化の可能性を調査しました。

 その結果、コーティングなしの超硬切削工具では切削距離20m、DLC膜では200mでアルミの溶着による切削性能低下が確認されたのに対し、DLC膜に硬いナノダイヤモンドを混入させたHND膜では4000mまで切削距離が伸び、さらに、水素フリーDLC膜では10000mまでの切削が可能なことがわかりました。この調査結果から、切削工具市場にナノ炭素硬質膜が有効であるとの結論が得られ、今後は切削工具市場のみならず、自動車部品への適用も視野に入れながら実用化を目指していきます。

 工業試験場では、企業と協力して新しいモノづくりの支援を行っていますので、ご興味を持たれた方はご連絡下さい。


各膜種の切削距離比較

担当:機械金属部 安井治之(やすいはるゆき)

専門:表面改質、材料力学

一言:石川県から新しいコーティング膜を発信します!