酸味に特徴を持つ清酒を試醸  ―リンゴ酸が2倍のさわやか清酒―

 近年、清酒売上の低迷が続く中、米や酵母で地域の特性を活かし、他地域との差別化、高付加価値化を目的とした新たな清酒が各地で開発されつつあります。

 工業試験場では酒米と酵母に着目し、酸味にアクセントを置いた清酒、これに適した酵母の開発を行っています。さわやかな酸味と言われるリンゴ酸を多く生成する酵母を県内酒蔵の清酒もろみや育種した変異株などの中から3株選抜し、仕込総米500gの小仕込試験を行いました。その結果、いずれも対照とした協会酵母9号(K-9)より酸度が高く、リンゴ酸含有量の多い清酒が得られました。

 そこで、3株の酵母を用いて仕込総米3kgの試験醸造を酒造会社へ委託し、再現性等の検討を行いました。その結果、小仕込試験の場合と同様に、いずれも酸度が高く、リンゴ酸も対照酵母(K-9)より1.5〜2倍程度多く含まれた清酒が得られました(図)。また、少人数ながら官能評価を行った結果、3株のうち2株がいずれもさわやかな酸味が感じられ比較的良い評価が得られました。商品化されれば、肉料理などと相性の良い清酒として期待されます。

 今後は、開発した酵母と、農業総合研究センターで育種中の新しい酒米との組み合わせにより、石川県の独自性を高めた「石川ブランド清酒」の開発に向けて酒造業界の支援を行っていきます。


試験醸造した清酒とそのリンゴ酸濃度(左端は対照酵母K-9)

担当:化学食品部  松田 章(まつだあきら)

専門:醸造

一言:日本酒を見直してみませんか?