リバースエンジニアリング技術の活用  ―人工股関節のカスタムメイド設計―

 衣服や靴などを心地よく身にまといたい場合は、個々の人の体型に合わせた“オーダーメイド”仕様でつくられます。これと同様に、人体に埋め込まれる医療用インプラント部品も、個々の患部に適合した大きさ・形状に作られることが望ましい場合が多くあります。工業試験場では、大腿骨に挿入される人工股関節の形状設計に関する研究を行い、患部の3次元X線CT画像を基にCADを用いて作成する手法について取り組んできました。

 人工股関節の大腿骨に挿入される部分はステムと呼ばれ、骨とステムのゆるみを防ぐためには骨内部の形状にできるだけフィットすることが適していると考えられています。図に示すように、3次元X線CT画像から骨の内面データをCADに取り込み、この骨の中への挿入が可能であり、かつできる限りフィットする形状を演算処理によって求める手法を構築しました。

 この例のように製品設計において実在するものを模倣したり、その形状に適合するものを設計する手法を“リバースエンジニアリング”と言います。工業試験場では、三次元測定機などによる自由曲面の多点サンプリングや工業用マイクロフォーカスX線CT画像からのCADデータ作成など、リバースエンジニアリング技術の支援を行っています。


人工股関節ステムのカスタムメイド設計 (研究協力:金沢工業大学、金沢医科大学)

担当:機械金属部  廣崎憲一(ひろさき けんいち)

専門:精密加工 精密測定

一言:医療福祉分野におけるモノづくりを応援します!