3.6 たて筋(異原糸混入)
 3.6.1 概 況
品 名:ポリエステルサテン
糸使い:たて糸 PE 125d 異収縮混繊糸、よこ糸 PE 75d/36f S,Z 2700T/m
発生状況:生機検査では発見できなかったが,加工後光沢差のあるたて筋が数本発生した。

 3.6.2 考 察
 織物からたて糸を取り出して実体顕微鏡で観察した結果,正常糸は嵩だか性があるのに対して,異常糸には見られない。電子顕微鏡で正常,異常部分のたて糸断面を見ると,正常糸は丸断面のフィラメントと分割繊維の複合糸で,異常糸は違った形状のフィラメント糸であり,明らかな差がある(図12)(図13)。本欠点は,異原糸が混入されて発生したものである。
 他にも,このような事例が多く,十分な糸の管理が必要と思われる。

図12  正常糸の断面1000倍/図13  異常糸の断面1000倍

 3.7 光沢むら
 3.7.1 概 況
品 名:ポリエステル織物
糸使い:たて糸 PE 75d/36f、よこ糸 PE 150d/36f,S,Z 1800T/m
発生状況:加工後(黒),織物の表面のところどころにしみ状の光沢差が発生した。

 3.7.2 考 察
 電子顕微鏡で観察した結果,正常部分の糸の表面は通常の減量加工に見られるようにクレーター部分は整然としている(図14)。これに対して,異常部分はフィラメントの一部が溶けている状態が判明した(図15)。加工前にたて糸が損傷されていて,加工における減量過多により発生したものと推察される。

図14 正常部分の糸の側面1000倍/図15  異常部分の糸の側面1000倍

 3.8 汚れ(カビ)
 3.8.1 概 況
品 名:ナイロンタフタ
糸使い:たて糸 NY 70d/24f、よこ糸 NY 70d/24f
発生状況:織物の表面に茶褐色の斑点状の汚れが発生した。

 3.8.2 考 察
図16 汚れ部分  200倍  電子顕微鏡で観察した結果,菌糸(糸状のもの)が確認できた(図16)。カビによる汚れのように推察された。よくある事例なので,製品の保管には十分な注意が必要である。

4.結  言
 走査型電子顕微鏡を用いた欠点解析は,(1) 糸断面の違い (2) 糸表面の損傷 (3) 織物表面の汚れ・カビ (4) 染色仕上げ加工むら等,各工程にわたる織物欠点解析に対応できることが分かった。今回報告した事例をはじめ,織物欠点解析で得られた貴重な情報を,本県繊維業界にフィードバックし,クレーム対策,品質向上の一助としたいと考えている。



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