3.レーザ外径測定機による自動計測

図4 レーザ自動定寸装置の外観 |

図5 レーザ自動定寸装置のシステム構成 |

図6 レーザ自動定寸装置による測定結果 |
心なし研削加工において,研削加工後の工作物外径を計測し,心なし研削盤にフィードバックして仕上げ寸法を制御する方法(ポストプロセス)は従来から用いられている。このとき使用する測定機としては,工作物に接触させて計測する方式が一般的である。しかし,工作物が連続的に送られる通し送り研削においては,加工速度が非常に速く,全数検査を行うのは難しい。そのため,サンプリング計測により切り込み量の調整が行われているが,フィードバックに時間差が生じ,追従性が悪くなるとともに,直径変更段取り作業に時間がかかりすぎるなどの問題が発生する。
そこで,段取り時間が早く,全数計測が可能で,追従性の高いレーザ外径測定機を用いる計測方法の開発を行った。
この方法は非接触による計測であるため,研削加工現場で用いる場合には,
[1]工作物表面の清浄度(研削液やごみ)
[2]工作物の両端部
による計測エラーをいかに少なくするかという点を考慮しなければならない。
レーザ外径測定機では,先に述べたように測定精度を高めるため多数のスキャンデータを平均化する手法をとっている。しかし,[1],[2]による誤差が大きい場合には,平均化を行っても計測値のばらつきが大きくなる。したがって,これまではレーザ外径測定機を通し送り研削加工において実用的に用いることができるのは,多量のエアーブローにより表面を清浄化できる長尺の工作物の場合に限られていた。
そこで,レーザ外径測定機の1スキャン毎の測定データを取り込み,[1],[2]による誤差データを無効データとしてキャンセル(異常値キャンセル)し,有効データのみを平均値処理する手法を開発した。レーザ外径測定機は1秒あたり700スキャンして測定データを出力するので,かなりの高速処理が必要となる。図5
に開発したシステムの構成を示す。
この場合,心なし研削加工された工作物は連続して計測装置に搬送され,レーザ外径測定機で外径計測される。計測データは1スキャン毎にパソコンに取り込まれ演算処理,判定されて,判定信号が心なし研削盤にフィードバックされる。
図6(a)の1スキャン毎に取り込まれた連続加工中の測定データをみると,工作物両端部や研削液・ごみの付着部を測定してデータも含まれているいることが明らかである。
そこで,ある設定範囲を設け,その範囲から外れる測定データを無効データとして異常値キャンセルすると図6(b)のようになる。
異常値キャンセルしない測定データと異常値キャンセルを行ったデータについて,それぞれ256個のデータの平均値を比較すると図6(c),(d)の様になり,明らかに後者の方がばらつきが小さくなり,測定値の変動も±0.5mmの範囲に収まっている。
したがって,本手法を採用することにより,両端部の出現頻度が高くなる長さの短い工作物の加工や送り速度の速い加工などにおいて,測定値のばらつきが著しく改善され,レーザ外径測定機による高精度計測ポストプロセス制御が可能になる。また,工作物直径の変更によるの測定段取り作業が短縮され,通し送り心なし研削加工の無人運転化が可能になることが期待できる。
4.結 言
以上,CNC心なし研削盤作業の自動化・省力化を進めることを目的として,レーザ外径測定機を応用した自動定寸装置の開発について述べた。得られた結果は,次の通りである。
(1) 通し送り心なし研削加工直後の工作物の直径を測定分解能0.1mmで連続的に非接触測定することが可能になった。
(2) 測定結果を心なし研削盤の制御装置にフィードバックすることにより,工作物の直径変動を±0.5μmにすることが可能になった。
参考文献
1) 寺井信之,前橋宏,澤村雄一:通し送りセンターレス研削における高精度化と省人化,先端加工学会誌, Vol.16,No.1,p.92-97(1997)
2) 小林昭監修:超精密生産技術体系第3巻計測・制御技術,東京,フジ・テクノシステム,1995
3) レーザスキャンマイクロメータ技術解説書:川崎,ミツトヨ,1996