薄板の円筒加工技術に関する研究

[機械電子部]   多加充彦
[機械電子部]   西村芳典
[機械電子部]   中藪俊博

 本研究では,ピンなどの機械加工部品とフレームとの組付け作業に要する製造コストの削減を図るため,プレス加工により薄板のフレーム上にピンを一体成形する方法について検討した。
 その結果,張出し加工,押出し加工,しごき加工および絞り加工を組み合わせた8回の工程の試験加工によって,厚さ1.2mmのSPCEで直径4mm,高さ11.8mmの円筒突起物を加工することができた。  また,新規部品の工具設計や適切なプレス加工条件を得るため,有限要素法による薄板成形シミュレーションの利用方法について検討した。その結果,成形過程から種々の加工条件による成形性の相違を把握することができ,ひび割れなどの破断やしわ発生を防止できる加工条件を推定するために有効な手段であることを確認した。
キーワード:薄板成形,深絞り,有限要素法

Study of Effective Techniques Used in Cylindrical Forming of Sheet Metal

Mitsuhiko TAKA Yoshinori NISHIMURA and Toshihiro NAKAYABU

 We studied the new process of forming pins on a frame instead of cutting pins and assembling them on a frame inorder to reduce the product cost performance. By press forming test with 8 steps of forming processes which combined with stretch, extrusion,ironing and deep drawing, the cylinder of 4mm diameter and 11.8mm height was able to formed on SPCE sheet metal of 1.2mm thickness.
 We also considered analyzing the behavior of sheet metal forming by finite element method simulation to design tools for new product and to get the appropriate forming conditions.
 As a result, it was confirmed that analysis of the process of deformations and stress distributions of deep drawing was effective method in order to estimate the forming condition without cracks and wrinkles.
Key Words:sheet metal forming, drawing, finite element method

1.緒  言
近年,プレス加工などの部品加工業界では,OA通信機器などを中心に,製品の多様化や製品開発サイクルの短期化が激しくなっており,部品の受注加工は多品種少量化,短納期,コスト低減の要求も高くなるなど,国内の部品加工業を取り巻く環境は非常に深刻な状況になっている。そのため,他の競合加工業社に比べて高精度,高付加価値製品の加工を行ったり,あるいは新規受注部品の生産準備に要する時間やコストをできるだけ低減させるなどの対策を検討することが重要な課題となっている。
 そこで,電化製品などの板金フレームに数多くの回転軸(ピン)などの部品が組み込まれていることに着目し,ピンなどの機械加工とその組み付け作業の工程を削減させる生産技術の検討を行った。
 本報告では,プレス加工でピン一体型のフレームの製造を可能にするため,薄板上の任意の箇所にしわを発生することなく,小径で高い円筒突起物を加工する方法について検討した内容について報告する。
 また,新規受注品をプレス加工する場合,最適な成形条件を得るためには,金型の試作とためし加工を繰り返し行う必要がある。これらの生産準備作業に要するコストや時間の削減を図るため,有限要素法解析による薄板の成形シミュレーションの有効活用の可能性について検討したので,その内容についても報告する。


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