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ロール測定用高性能レーザ干渉計の開発

■元工業試験場次長 中藪俊博
■機械金属部 廣崎憲一
■電子情報部 田村陽一
■(独)産業技術総合研究所 岡路正博 今井秀孝
■金沢大学大学院自然科学研究科 平尾政利 浅川直紀
■シグマ光機(株) 谷内秀夫 清水昭裕
■(株)松浦機械製作所 天谷浩一

緒  言
 工作機械には,テーブルなどの移動に伴って3個の位置偏差(位置決め偏差,運動方向に直角な2方向の直進偏差)と3個の角度偏差(ピッチ,ヨー,ロール),すなわち計6個の幾何偏差が発生する。レーザ測長機は,これらの偏差を高精度に測定できる装置として広く普及しているが,実用的な干渉計と反射鏡が開発されていないため,ロール測定は不可能である。著者らは,以前にロール測定用の反射鏡と干渉計を提案したが,種々の欠点があった。今回,これらの問題点の改善と感度の向上により,良好な再現性が得られることを確認したので実測結果を含めて報告する。

開発した干渉計
 図1は開発した干渉計とV形反射鏡の構造を示す。干渉計はキューブコーナプリズムCCP,偏向ビームスプリッタPBS,1/4波長版QP,バイプリズムBPなどから構成され,V形反射鏡は2枚の平面鏡からなる。V形反射鏡は,発生する6個の幾何偏差の中で,ロールに対してのみ感度を持つ。図1は,V形反射鏡上の4点へレーザ光を入反射させる方法を示しているが,入反射点を8点にした測定も試みた。図2は試作した干渉計とV形反射鏡を示す。

(図1 開発した干渉計(左)と反射鏡(右)の構造)
(図2 開発した干渉計(左)と反射鏡(右))
(図3 ロール角と検出長さの関係)

感度の校正
 図3は発生するロールに伴って検出される測長量を,4点反射と8点反射の場合について表示したものである。単位ロール角当たりの検出長さ,すなわちシステムの感度C(mm/″)は,図中のデータの回帰直線の傾きから得られる。干渉計とV形反射鏡の距離Lを200mm,400mm,600mmに変化させ,Lが感度に影響しないことを確認した。表1は,各データの傾きから得られた感度を比較したものである。4点反射の場合に比べて,入反射点数を倍にした8点反射の場合は感度が1.993倍に増大した。

(表1 開発システムのロール検出感度)

ロールの計測
 製作した光学系を用いて,テーブル移動型マシニングセンタの各ユニット送りに伴って発生するロールを測定した。図4は測定風景を示す。図5,6,7はそれぞれX,Y,Z送りの測定結果である。

(図4 マシニングセンタのロール測定風景)
(図5 ロール測定結果(X軸))
(図6 ロール測定結果(Y軸))
(図7 ロール測定結果(Z軸))

結  言
 今回開発したレーザ干渉計により以下の結果を得た。
(1)V形反射鏡へ入反射するレーザ光の間隔2bおよび開き角2φと検出ロール角γとの関係をレーザ光の軌跡を追跡しつつ求めることができた。
(2)被測定物の運動方向と平行にレーザを照射してロールを測定できることを確認した。
(3)ロール検出感度は4点反射法で0.8380×10-5(mm/″),8点反射法では1.6704×10-5(mm/″)と推定された。

論文投稿
日本機械学会論文集(C 編) 2009,vol.75,no.756,p.151-158.