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ユーザの感性を反映した伝統工芸デザイン支援システムの開発

■繊維生活部 餘久保優子 高橋哲郎 梶井紀孝
■電子情報部 加藤直孝
■エヌテクノロジー(株) 原田崇 荒井潤一

研究の背景
 伝統工芸品産地では,各作業工程に複数の職種が関与する分業制が多く見られ,関係者間の意思疎通が重要となっている。また,近年のライフスタイルの多様化に伴い,消費者ニーズや流通形態が複雑化しており,作り手・売り手・買い手の間では,製品のイメージを共有しづらい現状がある。さらに産地企業の多くは,新たな市場を開拓することが課題となっているが,提案型の商品開発を行う場合,試作費や在庫リスクの増加といった問題を抱えやすい。そこで本研究では,新製品開発において,関係者間の相互理解,共感,意思決定を支援するため,デザイン工程に高精細なコンピュータグラフィックス技術を用い,効率的なデザイン検討を可能とすることで開発の時間短縮,試作費用等の軽減を図る伝統工芸デザイン支援システム(図1)を開発した。

(図1 デザイン支援システムの概要)

 

研究内容

(1) テクスチャ(着せ替え)シミュレーション
  モデルデータに金箔,漆,陶磁器等の質感や絵柄を簡便に張り替えでき,新たなテクスチャの追加や編集などユーザが自由にカスタマイズできる機能を追加した。
(2) 感性評価データインタフェース
  工芸素材を対象とした男女211名の感性評価データを本システムに取り込んだ。ユーザは感性言語に従って導かれたテクスチャを形状モデルにシミュレーション可能である。
(3) 伝統工芸素材の質感および基本形状データベース
  各産地組合の協力を得て,182点の実物サンプルの収集し,質感生成を行ってデータベース化した。また各産地でニーズの高い80点の定番商品の形状データベースを作成した。

 

研究成果
 本システムを実際の商談や開発の場に活用した結果,以下の成果が確認された。
・製作前に顧客の好みにあわせてデザイン案を視覚的に提示,ニーズにあった製品を提案できる。
・試作費用や在庫リスクの軽減を図れると共に,同種(類似)商品を搬送,展示する必要がなくなる。
  また,本システムは,広範囲なデザイン工程に活用できると考えられるが,特に試作にコストがかかる高級品,建築内装品のデザイン検討や仮想試作および仮想在庫に効果を発揮することが確認された。

 

論文投稿
International Conference on Kansei Engineering and Emotion Research 2007, F-18