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PZT圧電セラミックスの繰返し疲労と機械的特性

■化学食品部 北川賀津一
■防衛大学校 山本孝
■金沢大学 北川和夫

研究の背景
  チタン酸ジルコン酸鉛(以下PZTと略す)圧電セラミックスには機械的品質係数(Qm)が小さいlow-QmPZTと,Qmが大きいhigh-QmPZTがある。最近はhigh-QmPZT の需要が増加している。high-QmPZT は連続的に伸縮運動を行うので,疲労特性も含めた機械的特性に優れている必要がある。本研究では静的な機械特性と繰返し応力を印加した疲労特性について検討した。

研究内容
  セラミックスは脆性材料で,破壊靭性値が小さく破壊源の欠陥寸法が焼結粒子径にほぼ等しいので疲労破壊はないと言われている。しかし最近はセラミックスも微小な欠陥からのゆっくりした亀裂の成長(スロークラックグロース:slow crack growth)による疲労破壊が観測されている。
  セラミックスの疲労は次の2式で規定される。式(1)は破壊靱性値が亀裂長さに依存することを示す。
KΙcは破壊靱性値,σfは応力,aは亀裂長さ,Yは定数である。
一方,亀裂進展速度は式(2)で表される。
aは亀裂長さ,tは時間,ν0は材料定数,KΙは応力拡大係数,KΙcは破壊靱性値である。
 この2式からlntをlnσに対してプロットすると右下がりの直線関係が得られる。図1にhigh-QmPZT とlow-QmPZTの最大負荷応力と破壊までの回数を測定した結果を示す。繰返し応力の印加回数が多いほど最大負荷応力が小さくなること,最大負荷応力と破壊までの回数の対数に右下がりの直線関係が成立することから疲労破壊の可能性が高いことがわかった。high-QmPZT とlow-QmPZTはいずれも50MPaの最大負荷応力を印加した場合は,繰返し回数が106回でも破壊しなかった。直線の傾きの大きさはhigh-QmPZT がlow-QmPZTよりも大きくなった。これよりhigh-QmPZTの場合は繰返し応力による疲労損傷が大きいと考えられる。破断面観察からhigh-QmPZTは粒界破壊が顕著であった。

(図1.最大負荷応力と破壊までの回数)

研究成果
 3点曲げ試験の治具を使用して,正弦波の繰返し応力を印加する方法でPZT圧電セラミックスの疲労特性を測定評価した。静的機械特性(ヤング率,曲げ強さ,破壊靱性,ビッカース硬さ)はいずれもhigh-QmPZT がlow-QmPZTよりも大きくなった。初期の疲労特性はhigh-QmPZT が大きいが,繰返し回数が増えるにつれてhigh-QmPZTの最大応力はlow-QmPZTよりも大きく低下した。この原因としてhigh-QmPZTの場合は疲労による損傷が大きく,繰返し応力により亀裂の成長速度が速くなることが考えられる。

論文投稿
粉体および粉末冶金 Vol. 52, No. 1, 2005. p.16-21.