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高圧処理を利用した海島型複合短繊維のアルカリ分割

■繊維生活部 木水貢 山本孝
■福井大学 久田研次 堀照夫
■日本バイリーン(株) 宮口典子 山口俊平

研究の背景
  極細繊維を用いた繊維製品は,その繊維の表面積の大きさ,柔らかさ,なめらかさ,繊維間に生ずる微細構造等により柔軟性,ワイピング性,撥水性の特徴を有し,産業資材分野において各方面で幅広く用いられている。海島型複合短繊維(海成分:ポリエチレンテレフタレート(PET),島成分:ポリプロピレン(PP))を分割させて極細繊維を得る方法としては,海成分であるポリエステルをアルカリによる加水分解によって除去し,島成分であるポリプロピレンの極細繊維を得るものがある。この複合短繊維の溶解処理による分割方法は,処理中の攪拌(絡み合い,分割斑)や処理液の廃棄において幾つかの問題点を抱えている。そこで,このアルカリ分割法の効率化を図ることを目的として,超高圧条件での処理を検討した。

研究内容
  海島型(PET/PP)コンジュケート短繊維の分割方法について,50MPaを超える高い圧力下でPETのアルカリ加水分解処理による割繊方法を試み,その圧力,温度およびアルカリ加水分解反応促進剤等による分解性への影響について検討した。
  その結果,処理圧力(図1),処理温度の増加により重量減少率が向上し,カチオン系界面活性剤の添加により重量減少率が促進されることを確認した。また,処理圧力に伴う反応速度定数の変化から導き出される活性化体積は,界面活性剤の添加により減少する(図2)。界面活性剤の添加量によって,促進効果が変化しなかったことから界面活性剤は直接反応性を変化させるものではないが,不均一反応の反応場を活性化することにより反応を促進するものと考えた。また,SEMで試料を観察したところ,重量減少率95 %では海成分であるPETのほとんどが分解したため,島部分のPPの極細短繊維がきれいに分割して広がることがわかった(図3)。

(図1 処理圧力によるアルカリ減量率変化)
(図2 界面活性剤添加量による活性化体積変化)
(図3 アルカリ処理後の複合短繊維(減量率95%))

研究成果
  この複合短繊維のアルカリ分割法の効率化を図るため,超高圧条件での処理を検討した。その結果、超高圧下における温度およびアルカリ加水分解反応促進剤等による分解性の影響が明確となった。

論文投稿
繊維学会 Vol. 61, No.1, 2005. p59-62