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視覚障害者用の携帯型色認識装置の開発(第2報) -色模様認識のための色と音のマッピング-

■電子情報部 前川満良
■(株)北計工業 橋爪慎哉
■金沢大学 城戸美沙尾 関啓明 神谷好承

研究の背景
 視覚障害者が日常生活の中で,物体の色や柄が分からず不便を強いられている場面が多い。しかしこの課題に対して,これまでは対象物の部分的な色を認識する研究しかないのが現状である。そこで図1に示すように,対象物をなぞりながら部分的な色の認識を繰り返すことで,対象物全体の色が認識できないか検討した。このように連続で色認識する場合には,効率的に色情報を呈示する必要がある。そこで本研究では色情報を音情報に変換し,音を聞いて色を認識するシステムを提案,開発した。

(図1 色模様を認識させる手法)

研究内容
  色情報と音情報のマッピングとして,2つの方式を提案した。1つは,図2に示すように色の三属性の基本となる色相と音階をマッピングする方式である。色相では色の連続性があり環のようになるが,音階の場合にはB(シ)からC(ド)で1オクターブのズレが生じ不連続になる。この課題に対して聴覚の錯覚から音階が連続しているように感じる無限音階を利用し,色相とマッピングした無限音階方式を提案した。もう1つの方式は,図3に示すように光の三原色である赤・緑・青を3種類の楽器とマッピングする方式である。具体的には,赤・緑・青の刺激比率と3楽器の音量をマッピングして同時に鳴らす三重奏方式である。
  2つの方式の有効性を検証するために10人の被験者(うち2名は視覚障害者)に,色の変化の様子を認識する色模様識別実験,音だけで色名を答える色名認識実験を行った。
  色の変化を認識する色識別実験では,無限音階方式が94%,三重奏方式が98%と認識率は高く,その有効性が示された。色名認識では,表1に示すように両方式とも音階同定能力に依存することが分かった。

(図2 無限音階方式)
(図3 三重奏方式)
(表1 色名認識率)

研究成果
  本研究では,無限音階方式と三重奏方式を提案し,実験により以下の結果を得た。
(1)色模様識別では,両方式とも有効であった。
(2)色名認識では,音階同定能力が大きく影響し,その能力が高い人ほど正答率が高かった。
(3)色名をその都度確認する機能と併用することで,対象物全体の色の様子が把握できることを確認した。

論文投稿
精密工学会誌 Vol. 70, No. 8, 2004. p.1117-1121.