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Preventive Technology of Translucent Urushi Film Discoloration Tachio ICHIKAWA and Toshiro EGASHIRA |
When translucent urushi wares were kept in touch with
hot water for a certain period, turbidness occurred in the film and its color
changed to grayish brown. Several methods were investigated to decrease the amount
of discoloration. Following results were obtained.(1) The amount of a discoloration
of translucent urushi film varied remarkably with the producing place of crude
urushi. (2) Nayashi (stir)time and an additional quantity of oils in refining
lacquer had an influence on a discoloration of translucent urushi. (3) Mixing
urushi pro-duced in Thailand, Vietnam, or urushiol that is main ingredient of
urushi to that produced in China , an amount of discoloration of trans- lucent
urushi were bound to be decreased . (4)When gummy substances were reduced from
urushi sap using centrifuge, an amount of discoloration of the translucent urushi
were bound to be decreased. (5) Discoloration of urushi film were closely related
with the numberof drying days . By combining the above-mentioned results, it is now possible to obtain a translucent urushi whose discoloration is small. Key Words:Urushi, Clear paint, Discoloration, Hot water, Oils |
表1 生漆の化学組成及び物性 |
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表2 混合漆の配合割合と製漆後の物性 |
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表3 色差の感覚的な表現 | ||||
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表4に中国産産地別漆の熱水変色試験の色差を示す。中国から輸入される生漆は,主な産地だけでも十数種類の品種があり,それぞれ物性,品質に特徴がある。変色試験の結果,産地によって変色状態に大きな違いがあることが分かった。 変色の小さい産地は,城口,ランコウ,モウポ,湖北小木の順で,40時間後の塗膜の色差は5.31〜6.00で,特に城口,モウポ産は偏差値も小さく,熱水変色に対して安定した漆であることがわかった。 変色の大きい産地は,畢節,安康,イン陽,竹渓で 40時間後の塗膜の色差は11.99〜9.36 であり,透漆によく使う漆も含まれていた。熱水変色150時間後の塗膜の変色状態を比較すると,初期の段階で変色が小さい漆は,長時間熱水に触れても,変色は小さいことが分かった。このことから,熱水に対して安定した品質を得るためには,変色の少ない産地の漆を基本とし,品種の選定,ロットの違う生漆の混合を行った方が良いことが分かった。 |
表4 中国産地別透漆の熱水変色の結果![]() |
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図1 なやし時間の違いと熱水変色 | 図2 なやし時間の違いと熱水による 光沢の変化 |
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図3 つや剤の添加量と熱水変色 | 図4 つや剤の添加量と熱水による 光沢の変化 |
図5に塗膜の乾燥経過日数に対する熱水試験と変色の関係(色差)について示す。塗膜乾燥経過日数が
7日の塗膜は, 4時間後の色差は4.32,20時間後には8.34と変色が大きく,熱水試験初期から変色が急速に進行した。また,12,33日以降経過した塗膜は,熱水試験40時間後の色差が4.53及び3.84と小さい値となったが,80時間後の色差が15.97及び14.94となり,40時間後から変色が進行した。しかし,
112日( 4カ月)経過した塗膜では,80時間後の色差が5.1 と安定しているが,その後は変色が急速に進行した。 このことから,漆器製品は十分に乾燥してから出荷することによって,変色によるクレームの発生を少なくすることが可能であることがわかった。 |
![]() 図5 乾燥経過日数と熱水試験による変色 |
図6に中国産漆にベトナム産漆を混合した漆塗膜の熱水変色を示す。ベトナム産漆を混合すると,初期の変色は中国産より大きいが,40時間後では,中国産より変色が少なかった。このことから,ベトナム産漆の使い方次第では,変色防止に有効である。 | ![]() 図6 ベトナム産混合漆の熱水変色 |
図7に中国産漆にタイ産漆を混合した塗膜の熱水変色について示す。 タイ産漆を加えると150時間後の色差値は1.72〜3.93で,変色の防止効果が非常に大きいことが分かった。しかし,タイ産漆は乾燥が悪いことや色が黒褐色であるため,多量に加えると塗膜の硬さ不足や,塗膜の色味が濃くなるので注意が必要である。また,塗布作業においても刷毛直りが悪いことも分かった。 |
![]() 図7 タイ産混合漆の熱水変色 |
図8に中国産漆にウルシオールを混合した漆塗膜の熱水変色について示す。ウルシオールを加えると熱水試験初期(40時間)の色差は2.07〜3.17で,多く混合するほど変色防止の効果が大きい。しかし,80時間以降は急速に変色が進行し, 150時間では,無添加より変色が大きかった。このことから,ウルシオールを混合すると初期の変色を防止する効果があることが分かった。 | ![]() 図8 ウルシオール混合漆の熱水変色 |
図9に中国産漆にタイ産とウルシオールを混合した。 漆塗膜の熱水変色について示す。タイ産を多く加えると変色防止の効果が顕著で,80時間後の色差が0.84(色差の感覚的な表現:わずかに)と変色が少なく,その後の変化も小さい。しかし,ウルシオールを多くすると,80時間後は急速に変色が進行した。 |
![]() 図9 タイ産,ウルシオール混合漆の 熱水変色 |
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図10 ゴム質の量と熱水変色 | 図11 中国産のゴム質減量化と熱水変色 |
図12に漆硬化剤の添加量と熱水変色について示す。 漆硬化剤を3wt%添加した塗膜は,無添加と比較すると大きい差はないが,5wt%以上添加すると熱水試験40時間後に急激に変色が増加し,無添加(ΔE4.56)の2倍以上で,添加量が多いほど変色が大きくなった。従って,メーカが指定する添加量は3〜10wt%となっているが,変色防止の観点から見れば極力少なくした方がよい。従って,漆硬化剤の効果(乾燥促進,垂れ防止)を期待して多く加えることは,避けた方がよいことが分かった。 |
![]() 図12 漆硬化剤添加量と熱水変色 |
1) | 鍬田一男,坂本誠,市川太刀雄,高野千之:漆器の高品質化に関する研究,昭和60年度技術開発費補助事業成果普及講習会テキスト,p.1-30 |
2) | 坂本誠,市川太刀雄,江頭俊郎:製漆工程の改善研究,石川県工業試験場研究報告,39,p.9-15(1991) |
3) | 坂本誠,市川太刀雄,江頭俊郎:黒漆の変色防止に関する研究,石川県工業試験場研究報告,41,p.23-31 (1993) |
4) | 市川太刀雄,坂本誠,江頭俊郎:黒漆の変色防止技術の実用化,石川県工業試験場研究報告,46,p.19-28 (1997) |
5) | 日本工業規格 JIS K 5950:精製漆 |
6) | 日本工業規格 JIS K 5400.7.6:鏡面光沢度 |
7) | 日本工業規格 JIS Z 8729:色の表示方法 |
8) | 日本工業規格 JIS Z 8730.6.1:色差の計算方法 |
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