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Development of the Sensor System for Defecation Yoshiteru DOGUCHI, Yasuto YONEZAWA and Yuka YAMADA |
It is necessary for the bedridden aged people and
a disable person to keep skin cleanly by exchanging the diaper as soon as possible
after defecation,because the skin trouble is especially caused by the feces of
diarrhea in addition to an unpleasant feeling. However,there has not been any
devices to detect defecation in the diaper. Therefore,we developed the sensor
system for defecation with odor sensors and a thermosensor. Three kinds of semiconductor
odor sensor of hydrogen sulfide,amine and VOC(Volatile Organic Compound) were
used in consideration of excretion odor components as odor sensor. Also,because
it was difficult to distinguish flatus and feces with odor,thermosensor was used
to distinguish with the difference of thermal capacity. As the result of physical
experiments at the hospital using this system,it was found to be able to detect
defecation. Key Words:defecation, sensor system, odor sensor,thermosensor |
2.排便検知センサシステム 図1に本研究で試作開発した排便検知センサシステムの概念図を示す。本システムはおむつ部,センサ部,データ処理部の3つで構成されている。 図2に排便検知センサシステムのフロー図を示す。 おむつ内の臭気を吸引用チューブで吸引し,においセンサに導入する。その応答信号をAD変換してパソコンに取り込み,データ処理を行う。 |
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![]() 図1 排便検知センサシステムの概念図 |
![]() 図2 排便検知センサシステムのフロー図 |
2.1 おむつ部 においセンサは小型で低価格にはなってきているが,おむつと一緒に廃棄できる程ではない。また,おむつの外側は尿漏れ防止のために防水加工がなされているため,においが外部に漏れにくい。そのため,繰り返し使用でき,においを確実にとらえるため,おむつ内に吸引用チューブを挿入し,においを吸引する方法を用いた。においセンサは水が吸着すると,感度が低下または応答しなくなる事が知られているため2),図3のように外側防水生地に直径3mmの穴を開け,その穴から尿吸収パッドと外側防水生地の間に吸引用チューブを挿入した。尿吸収パッドで取りきれない水が吸引用チューブに入らないように,撥水性,気化透過性に優れたゴアテックス叶サゴアテックスチューブ(フィルタとして)を吸引用チューブの先端に用いた。今回使用したゴアテックスチューブの特性を表1に示す。 |
![]() 図3 おむつへの取り付けイメージ |
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表1 ゴアテックスチューブの特性
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センサ部は,においセンサ,温度センサで構成している。 2.2.1 においセンサ においセンサには,半導体,水晶振動子膜,生体高分子膜等色々な測定方式のセンサが存在する2)3)。本研究では,小型,軽量,低消費電力,長寿命信頼性に優れている半導体においセンサを用いた。図4に半導体においセンサの外観を示す。半導体においセンサはセンサ表面でのにおい分子の吸着による酸化還元反応によって,においセンサの抵抗値が変化し,センサ電圧が変化することを利用しており,硫化物系,アミン系,一酸化炭素,炭化水素等の各種におい成分に応答するセンサが開発されている。便臭に感度のあるセンサを選択するためには,便臭,尿臭の構成成分を知る必要がある。調査した排泄臭の主な成分を表2に示す4)5)6)。一方,図5にアミン系においセンサの各種におい成分に対する応答例を示したが,アミン系のDMA(ジメチルアミン),TMA(トリメチルアミン)に最も高い感度を示すものの,他のにおい成分でも少なからず感度を示す。これは,アミン系センサに限らず全ての半導体においセンサに見られる特性である。そのため,単一種類のにおいセンサで排泄臭のような複雑な混合臭を区別するのは困難である4)5)。 そこで,本研究では排便の検知確度を高めるため,便臭の基本臭気成分である硫化水素(H2S),メチルメルカプタン(CH3SH),トリメチルアミン((CH3)3N)に応答するにおいセンサとして,表3に示した新コスモス電機叶サAET-S,CH-N,CH-Aの3種類の半導体においセンサを選択した。各センサは主要な感度ガスからAET-Sは硫化水素センサ,CH-Nはアミン系センサ,CH-AはVOC(有機揮発性物質)センサである。 においセンサは人間の鼻が連続でにおいを嗅ぎ続けるとにおいに対して鈍感になるのと同じように,におい分子の吸着が許容量を越えてしまうと応答しなくなる。そのため,図6の排便検知センサシステムのフロー系統図に示すように,においセンサ表面の浄化を行うための空気を,活性炭フィルタに通したゼロガス(清浄空気)を排泄臭と交互に導入する間欠サンプリングユニットを設けた。排泄臭とゼロガスの導入切り替えはタイマー制御により電磁弁で行なった。 本研究で試作したにおいセンサユニット外観を図7に示す。 2.2.2 温度センサ 放屁は便臭のみが体外に出たもので,放屁と便をにおいだけで区別する事は困難と考えられる。放屁は気体のため熱容量が小さく,温度は上昇してもすぐに下がる。それに対し,便は熱容量が十分大きく,温度が急激に下降する事はないと考えられる。この放屁と便の熱容量の差に着目し,放屁と便を区別する手段として表4に示す温度センサを使用した。温度センサは装着時の違和感を配慮し,直径0.1mmのK型熱電対を用いた。
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においセンサのセンサ電圧と温度センサの電気信号を潟Lーエンス製NR-250 PCカード型データ収集システムでAD変換を行ってパソコンに取り込み,データ処理した。 2.3.1 信号処理 図8に1サイクルあたりのセンサ感度の応答特性例を示す。縦軸はセンサ電圧(V),横軸は時間(sec)である。2.2.1章で述べたように間欠サンプリングユニットを設けたため,排泄臭導入によるセンサ電圧の上昇とゼロガス導入によるセンサ電圧の下降を繰り返す応答特性を示す。排泄臭導入では,おむつ内のにおい分子がセンサ表面に吸着するため,センサ電圧が上昇する。ゼロガス導入では排泄臭が導入されず,センサ表面の吸着におい分子が脱離するため,センサ電圧は下降する。ゼロガス導入の不自然な落ち込み(図8※印)は,ゼロガス導入では排泄臭に対する情報がないため,排泄臭導入開始の5秒前と導入後の10秒後のみのデータを記録したためである。 2.3.2 信号解析 図9に長時間測定した場合のセンサ感度の応答特性を示す。縦軸がセンサ電圧(V)と温度(℃),横軸が時間(sec)である。においセンサのセンサ電圧はゼロガス導入時をベースとし,時間に対する信号変化量で示した。図9を図8で示した排泄臭導入とゼロガス導入の各サイクルごとに臭気導入時のセンサ電圧のピーク値を結んで図10で示す応答波形で評価することにした。 |
試作したシステムを評価するため,千木病院において80〜90歳の寝たきりの高齢者を対象とした評価試験を女性5人,男性2人の計7人に対して行なった。試験は図1のように機器を設置し,試験器具の取り付けなど医療行為に関する内容は全て,看護婦が行なった。試験に対しては家族の方の同意に基づいて行なった。 3.1 取り付け方法 図2で示した吸引チューブの取り付けは,体動によって圧迫し皮膚を損傷させないために,腹部側に誘導することとした。温度センサは,尿とりパットの装着時に肛門付近となる部位にテープ固定した。 3.2 測定方法 排便を確実に計測するため,坐薬によって排便処置がなされる患者を対象として測定を行なった。座薬にはビサコジルと呼ばれる大腸刺激性下剤を使用した。これは大腸粘膜を刺激し,腸蠕動を起こさせ排便にいたらせるため,排泄臭に化学的変化を与える恐れはない。坐薬挿入後,従来通りテープ付き紙おむつを装着した時を0秒として測定を開始した。排泄臭の吸引とゼロガスの導入条件は20秒と30秒で行った。においセンサと温度センサのデータをモニタリングし閾(しきい)値から変化したときにおむつ内を観察し,排泄現象とセンサ検出結果との関係を調べた。閾値はおむつ内で排泄がない時をベースとし,それから約20%以上の応答変化が生じた場合におむつを開けて,排便の有無や排泄の種類を調べた。 3.3 試験結果 3.3.1 放屁の検知 放屁を検知した時の応答特性例を図11に示す。放屁を検知した時,各においセンサとも反応している。 中でもアミン系センサ,VOCセンサの応答変化が顕著であった。しかし,においセンサが応答するのに対し,温度変化は無かった。 3.3.2 尿の検知 尿を検知した時の応答特性例を図12に示す。VOCセンサに比べアミン系センサのセンサ感度変化が顕著となっている。尿が検知された時,温度が約2℃上昇した。 3.3.3 排便の検知 排便を検知した時の応答特性例を図13に示す。図11の放屁を検知した時と同じように,アミン系センサ,VOCセンサの応答変化が顕著であった。しかし,放屁の時と違い,90サイクルから100サイクルにかけて約1.5℃の温度変化が確認された。 |
1) | 辻,嶋岡,篠原,下沖,大賀,吉栄,笠原,藤里, 宮脇:撥水性多孔質盲端チューブと酸化亜鉛(ZnO)半導体センサによる排便検知センサシステム;医用電子と生体工学(第37回日本エム・イー学会大会 Japan Soc.ME&BE)第36巻特別号,p.555(1998) |
2) | 森泉,中本共著:鰹コ栄堂 センサ工学(1997) |
3) | 栗岡,外池編:匂いの応用工学 朝倉書店(1994) |
4) | 辻,藤元,緒方,森反:重度高齢者障害者の排泄介護と排便センサ,日本ME学会,BME Vol.10,No.5別冊(1996) |
5) | Y.Ghoos,D.Claus,B.Geypens M.Hiele,B.Maes,P. Rutgeersts;Screening methods for determination volatiles in biomedical samples by means on an off-line closed-loop trapping system and high-resolution gas chromatography -ion trap detection,Journal of Chromatography A,665, p.333−345(1994) |
6) | 大藪,南戸,辻:日常生活におけるニオイセンサ応答,第37回日本ME学会,No.RT02-5,p.205 (1998) |
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