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珪藻土れんがの高耐熱化と新規気孔形成技術の開発

■化学食品部 ○佐々木直哉,北川賀津一

1.目 的
 珪藻土れんがは,能登珪藻土とおが屑を原料として製造されている。その用途は主に鉄鋼炉や焼却炉の断熱材であり,900〜1000℃の耐火温度がある。珪藻土れんがは天然原料である能登珪藻土の性質で耐火温度が左右されやすく,以前は良質な原料を用いて1100℃の耐火温度があるれんがも製造していた。しかし近年,良質な原料の確保が困難となってきており,1000℃の耐火温度を維持することも難しいのが現状である。一方で,断熱性を高めるために加えているおが屑も国内での木材加工の減少により,供給量の不安定化や価格の高騰などの課題がある。
 そこで珪藻土れんがの耐熱性を向上させるため,コスト面から将来的にアルミ製造時の廃棄物資源であるアルミスラッジの有効活用を考慮し,能登珪藻土と水酸化アルミニウム(Al(OH)3)の最適な配合割合を検討した。またおが屑による気孔形成技術の代替技術を確立するため,軽量気泡コンクリートの製造で利用されている金属微粒子による発泡法について検討した。

2.内 容
2.1 珪藻土れんがの高耐熱化
 能登珪藻土と水酸化アルミニウムの配合割合を変えて乳鉢で混合後,乾式プレス成形によりφ30o×t5oに成形した。この成形体を1100,1200,1300℃で焼成し,それぞれの耐火温度における再加熱収縮率が2%以下(耐火断熱れんがの製品規格)となる水酸化アルミニウムの配合割合について検討した。表1にそれぞれの耐火温度に適した能登珪藻土と水酸化アルミニウムの配合割合を示す。1100,1200,1300℃の耐火温度に適した水酸化アルミニウムの配合割合は,それぞれ10%,30%,60%であることが分かった。

(表1 それぞれの耐火温度における能登珪藻土と水酸化アルミニウムの配合割合)

2.2 珪藻土れんがの新規気孔形成技術の開発
 上記の結果から,1300℃の耐火温度に適した配合割合で金属微粒子による発泡法について検討した。図1より能登珪藻土と水酸化アルミニウムを水分60%の泥しょう状態とし,pH調整剤として水酸化カルシウムを2%添加することでpH11〜12のアルカリ性にした。そこへ金属微粒子として金属アルミニウム(Al)をそれぞれ0.1,0.2,0.5%添加し混合後,型枠に流し込み成形を行った。この成形体を乾燥後1300℃で焼成し,かさ比重,圧縮強度などの物性評価と,X線CTによる気孔(穴)の大きさや形などの分布状態について検討した。図2に金属アルミニウムの添加量によるX線CT像とかさ比重及び圧縮強度を示す。X線CT像から金属アルミニウムの添加量の増加とともに気孔が大きくなっている。気孔の形も平面図と側面図で異なり,比較的大きな気孔は横に潰れたような平板状になっている。またかさ比重と圧縮強度も,これらの気孔の変化により金属アルミニウムの添加量の増加とともに減少することが分かった。

(図1 金属微粒子による発泡法)
(図2 金属アルミニウム添加量によるX線CT像とかさ比重及び圧縮強度)

3.結 果
 能登珪藻土に水酸化アルミニウムを配合することにより,従来の900~1000℃の耐火温度から耐熱性を向上させ,1100~1300℃の耐火温度をもつ配合割合を確立した。またおが屑の代替技術として金属微粒子による発泡法を用い,珪藻土れんがとして実用レベルの物性値を得ることができた。この方法は成形時に気孔を形成するため,従来のおが屑を燃焼する時間が削減でき,燃料費などの低コスト化が期待できる。