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工程簡素化のための挿入部品のリフローはんだ付け手法の開発

■電子情報部 ○奥谷潤,米澤保人,筒口善央,的場彰成

1.目 的
 電気製品には,電子部品がはんだ付けされたプリント配線基板(以下,基板)が組み込まれている。電子部品には,用途や形状の違いなどで表面実装部品と挿入部品があるため(図1),次の2つの工程によって電子部品のはんだ付けを行っている(図2)。@基板に印刷(塗布)したソルダペースト(はんだ粉末とフラックスを混練したはんだ材料)に表面実装部品を載せ,基板全体を加熱してソルダペーストを溶融させるはんだ付け方法(リフローソルダリング。以下,リフロー),Aスルーホール(貫通穴)に挿入部品のリードを挿入した基板を溶融はんだの波面に接触させるはんだ付け方法(フローソルダリング。以下,フロー)。そこで,生産工程の簡素化を目的に,挿入部品と表面実装部品の同時はんだ付けを可能にするための挿入部品のリフローはんだ付け手法について検討した。

(図1 電子部品の種類)
(図2 電子部品のはんだ付け)

2.内 容
2.1 実験方法
 挿入部品をリフローではんだ付けする手法として,表面と裏面に温度差を設け,基板裏面側の温度を表面側よりも高温にする方法に注目した。図3のように裏面を優先的に加熱すると,熱が裏面から基板表面に塗布したはんだにスルーホールを介して伝わる。溶けたはんだは温度の高い裏面側へ移動してリードとスルーホール間のはんだ付けが可能になると考えられる。

(図3 裏面優先加熱によるはんだ付けの概念図)

 (1)裏面優先加熱の検討
 実験では,生産現場のリフロー工程を再現するために工業試験場のリフロー装置(潟}ルコム製 RDT-250C)を用いた。ただし,通常のリフロー装置の加熱方法は,表面実装部品を基板表面ではんだ付けするため,表面の温度が高くなる。そこで,基板裏面に熱風が当たるよう装置改造を行い,裏面を優先的に加熱できるようにした。

 (2)はんだ付け対象の挿入部品
 リフローによりはんだ付けする挿入部品として電解コンデンサやコネクタを対象として用いた。これらは,表面実装部品と比較して寸法が大きいため,熱容量が大きく加熱されにくい。また,材質や構造が熱に弱い電子部品として選定した。

2.2 実験結果
 (1)裏面優先加熱の表裏温度差
 改造後のリフロー装置における基板周辺の温度測定の結果を図4に示す。縦軸は温度,横軸は経過時間を表している。基板裏側雰囲気(基板から10mmの位置)の温度が表側雰囲気(同10mmの位置)よりも最大約60℃高くなった。これにより,表面にある挿入部品への熱影響が軽減できると思われる。

(図4 装置改造後の温度測定)

 (2)はんだ付け結果
 図5にリフローによる挿入部品と表面実装部品の同時はんだ付けを試みた基板を示す。挿入部品は,2種類の電解コンデンサ(図5の左:アルミ外装,図5の右:樹脂外装)とD-Subコネクタ(オス),表面実装部品は,チップ抵抗(5025サイズ)を用いた。なお,図4で示した温度プロファイルを用いてリフローを行なった。リフロー後における電解コンデンサのふくれ,外装の破損やコネクタの樹脂部分の溶けといった不具合は発生せず,チップ抵抗もはんだ付けされていることが確認できた。
 また,挿入部品は,表面実装部品と比較してはんだ付けに大量のはんだが必要なため,はんだを厚く(マスク厚0.6mm)印刷することとした。これにより,電解コンデンサのはんだ付けにおいて,スルーホールの裏面にまではんだが行き渡っていることが確認できた(図6)。

(図5 はんだ付け後の試験基板)
(図6 電解コンデンサのはんだ付け箇所)

3.結 果
 基板裏面を優先的に加熱する方法や塗布するソルダペーストの増量化などにより,挿入部品のリフローはんだ付けが可能になった。さらに,温度プロファイルを見直すことなどから表面実装部品との同時はんだ付けが可能なリフローはんだ付け手法を開発できた。
 今後,リフローで実装可能/不可能な挿入部品の判別を行う。また,実際の生産現場でのリフロー条件を明らかにし,電子部品のはんだ付け工程の簡素化を行いたいと考えている。