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新規酒米「石川門」を用いた純米酒用酵母の選抜

■化学食品部 ○松田 章 有手 友嗣 中村 静夫
■農業総合研究センター 山田 幸信 三輪 章志 北田 敬宇

1.目 的
 近年,清酒の需要はビールや発泡酒,焼酎,ワインなどにも押され低迷している。清酒の需要拡大と差別化を図るため,各地で独自の原料米や酵母の開発が盛んに行われている。石川県でも県独自の酒米開発が望まれ,農業総合研究センターで新規酒米石川酒52号(愛称石川門)が開発された。石川門は大吟醸酒用酒米として育成されたが,心白が大きいため精米歩合50%以下の高精白では砕米になりやすいなどの課題が酒造組合連合会での試醸で提示された。そこで,本研究では石川門を大吟醸酒用より純米酒用酒米(精米歩合60〜70%)に適しているものと考え,それに適した純米酒用酵母の選抜を目的に取り組んでいる。本報はその中間報告である。

2.内 容
2.1 石川門の特性
 石川門は玄米の大きさ,玄米千粒重がともに山田錦と同等に大きく,山田錦や五百万石に比較して吸水速度,吸水率が大きい特徴を有する(表1)。

(表1 理化学特性(精米歩合70%))

2.2 酵母の選抜
 選抜対象とした酵母は,当場保有の214株とした。選抜手順は図1のフローに従って行った。選抜結果も(選抜株数)で併記した。なお, 2次選抜及び3次選抜での仕込配合をそれぞれ表2, 表3に示す。

(図1 選抜のフロー図)
(表2 2次選抜の仕込配合(総米100g))
(表3 3次選抜の仕込配合(総米3kg))

2.3 もろみ及び発酵液の分析
 もろみ及び発酵液の一般成分は国税庁所定分析法に準じて行い,有機酸は有機酸分析システムICS-1500(日本ダイオネクス(株)製),香気成分は ヘッドスペースガスクロマトグラフシステムHSS-4A(GC-17A)((株)島津製作所製)で測定した。

3.結 果
 1次選抜では,きょうかい酵母を除き,発酵力と官能評価の良好な16株を選抜した。このうち2次選抜では,発酵力の弱い1株を除外し,残り15株がきょうかい酵母とほぼ同等の発酵力を有することを確認した。図2に発酵力の一番強い株と弱い株との発酵曲線をきょうかい9号酵母(K-9)と比較して示す。この中から,さらに官能評価により,香味の調和に優れた7株を選抜した。
 3次選抜では,総米3kgの試験醸造の結果,酸味酵母1株([1])を除く6株がきょうかい9号酵母(K-9)と同等以上の発酵力を有した。さらに官能評価により,5株([2],[3],[5],[6],[7])がK-9とほぼ同等かそれ以上の評価を得た(図3)。しかし,評価の平均値はK-9と大差はなく,嗜好のバラツキが大きかった。選抜株7株の有機酸及び香気成分を表4に示す。官能評価が良好であった株は,K-9と成分的に大きな差は認められなかった。逆にリンゴ酸含量などが高く,風味に特徴のある株は評価が低い結果となった。
  今後,これらの結果の再現性の確認と選抜株の絞り込みを行い,総米数十kg単位でのスケールアップによる試験醸造を行う予定である。

(図2 発酵曲線)
(図3 各清酒の官能評価)
(表4 各清酒中の有機酸、香気成分)