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霧検出可能な降積雪監視装置の開発

■電子情報部 ○田村 陽一 米沢 裕司
■中日本ハイウェイ・エンジニアリング名古屋(株) 牧野 幹雄
■(株)松浦電弘社 松浦 隆弘

1.目 的
 トンネルの出口付近などの道路状況が急激に変化する地点では,ドライバーが予期しない突然の雪や霧が原因となる交通事故が発生している。そこで,これまでに路面の積雪等を自動的に検知し,電光標示板にその情報を標示することによりドライバーに注意を促す降積雪監視装置を開発している。しかし,この降積雪監視装置は霧の検出機能をもたず,また,夜間監視に大型特殊照明を用いるため装置専用支柱の施工が必要(図1)など設置のコストが大きい。そこで,これらの問題を解決するため,降積雪監視に加え霧の有無を自動的に判断し,大型特殊照明を用いずに街灯の光で夜間監視を可能とする降積雪監視装置の開発を行った。なお本研究は,平成21年度科学技術振興機構の「地域ニーズ即応型研究」の採択を受け行った。

(図1 大型特殊照明と専用支柱)

2.内 容
2.1 街灯による降積雪監視の画像処理アルゴリズム開発
  街灯を用いた場合,従来用いていた大型特殊照明による撮影と比較して光量,照射角,波長が異なるため,路面画像の写り方が異なり,従来の降積雪監視方法が十分機能しない。そこで,街灯を用いた場合でも正確に降積雪を監視できるよう,シャッタースピードを遅くして光量不足を補い,「降積雪(動き)検出アルゴリズム」のパラメータを見直した。さらに,降雪検知用の補助照明を設置するなどの改良を加え,街灯下でも降積雪を検知できるようにした。

2.2 霧検出の画像処理アルゴリズム開発
  霧発生装置(フォグマシン)を用いて実験室内で霧を発生させることで,カメラによる撮影画像がどのように変化するかの検証を行った。この検証により,撮影画像の輝度が霧発生と相関があることがわかった。この情報をもとに霧検出アルゴリズムを開発し,従来の路面監視装置で撮影された霧発生時を含む多数の撮影画像をパソコンで処理することでアルゴリズムの妥当性を検討した。

2.3 FPGAボードによる降積雪,霧検出機能の実装
  従来の降積雪監視にはパソコンを用いていたが,装置の小型化やコスト削減の要望から,2.1によるパラメータ改良を反映させた降積雪監視機能,および2.2による霧検出アルゴリズムに従った霧検出機能をFPGAボードに実装した。また,夜間撮影時に用いる街灯の光は点滅しており,点滅周波数とカメラの撮影周波数が非同期であることから撮影画像の明るさが安定しない。これを解決するため,街灯の点滅と同期をとりながらの撮影および補助照明の発光を行う機能を開発し,撮影タイミングと補助照明発光タイミングの調整を行った。本機能は処理速度の面でパソコンでの実現が困難なため,FPGAボードによるハードウェアによって開発した。

2.4 街灯による降積雪監視の検証
  昼間の撮影画像を図2に,夜間の街灯光による撮影画像を図3に示す。夜間でも降積雪監視に必要な明るさの撮影画像を得ることができた。常に安定した明るさの撮影画像が得られていることから,街灯の点滅と同期して撮影を行う回路が有効に機能していることがわかる。カメラの撮影周波数は60Hz付近,街灯の点滅周波数は100Hz(東日本区域)もしくは120Hz(西日本区域)付近である。周波数が整数倍に近い西日本区域では同期が比較的容易だが,東日本区域では同期が困難であるため,新規に同期回路(特願2007-294156)を開発,実装した。これにより,東日本区域/西日本区域に関わらず設置が可能となった。降積雪の検知も,検出アルゴリズムのパラメータ見直しと補助照明設置によって正常に動作することを確認した。

(図2 昼間の撮影画像)
(図3 夜間の撮影画像)

2.5 霧検出の検証
  撮影画像内の白線部の輝度(以下,白線輝度)とアスファルト路面の輝度(以下,路面輝度)を使用して霧検出を行った。図4に霧発生日時における白線輝度と路面輝度の変化を示す。白線輝度は一定値に保たれるように制御されているのに対して,路面輝度は濃霧注意報が出ている時刻に上昇している。この結果を基に,路面輝度を検出する画像領域の設定や,霧発生を判断する輝度しきい値の設定などにより霧検出が可能となった。

(図4 白線輝度と路面輝度の検出例)

3.結 果
  夜間の街灯下で使用できる霧の検出機能を搭載した降積雪監視装置の試作機を開発し,正常に動作することを確認した。試作機は現在,図5のように街灯の支柱を用いて高速道路に設置し,実地検証中である。今後は,データの収集と動作評価を継続し,装置全体の信頼性・安定性の検証を行う。

(図5 試作機)