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酸味酵母を用いた清酒の商品化

■合資会社 金紋酒造 西出 裕恒

■技術開発の背景
  当社は粟津温泉の近くに位置し,小売の他, 温泉観光客を中心とした直販も行っています。客層は多岐にわたり,最近の食の多様化や嗜好の変化に伴い,アルコール飲料の嗜好も変化しています。当社では,多様化する顧客ニーズに対応できるよう,バラエティに富んだ品揃えの必要性を感じていました。そこで,今回,石川県工業試験場からリンゴ酸を多く生成する酵母の提供を受け,洋風料理との相性の良い,ワインのような酸味を付与した清酒の開発に取り組みました。開発に当たり,工業試験場からは酵母の特性及び醸造条件の指導,醸造後の製品評価の支援をいただきました。

■技術開発の内容
  新製品開発の開発に当たっては,コンセプトを以下のように定めました。
(1)肉料理や油を使った洋風料理との相性を考慮し, ワインのような酸味を付与する。
(2)酸味のもとは「さわやかさ」で評価の高いリンゴ酸とする。
(3)清酒の旨味と酸味が調和するようにアルコール添加酒ではなく純米酒とする。

■製品の特徴
  上記コンセプトに基づいて醸造した清酒は以下のような特徴を持っています。
(1)金沢酵母と呼ばれる,きょうかい酵母14号泡なし(K-1401)を用いた清酒と比較して,リンゴ酸を約1.3倍多く含みます(図1)。
(2)後口にさわやかな酸味が感じられます。
(3)リンゴ酸のさわやかな酸味を引き立たせるため,冷やして飲む「冷酒」タイプです。
(4)原料米:地元産コシヒカリ(精米歩合65%)を使用しました。比較対象も同様。
(5)酸味と甘味,旨味がバランスよく含まれた,これまで当社になかったタイプの清酒に仕上がりました。

(図1 商品化された酸味清酒とりんご酸含量)

■今後の展開
  リンゴ酸酵母を用いて製造した新製品を「心待ち」と名づけました。実際に「今までに無い日本酒」と販促することができたため,お客様の興味を惹くことができ,「心待ち」第一弾は,好評につき完売となりました。そこで需要に応えるため,現在「心待ち」第二弾を製造したところです。
  今後もさらに顧客ニーズにお応えできるように,従来製品の伝統の味を守りながら,トレンドをキャッチした新製品の開発も行っていきたいと考えています。