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大豆ホエー・オカラの乳酸発酵物の食品への利用

■羽二重豆腐株式会社 食品研究室 川嶋 正男

■技術開発の背景
  豆腐製造の副産物として大豆ホエー(凝固,圧密の遊離液)及びオカラが排出され,弊社における年間排出量は大豆ホエー約5,600トン,オカラ約880トンに及んでいます。これらは腐敗しやすいことから,オカラの一部が食用,飼料へ利用されるにとどまり,大豆ホエーは全量を弊社施設で活性汚泥処理し,オカラは産業廃棄物として外部委託しております。しかし,これらの処理方法は,処理コストが高く,環境負荷が高いことから有効利用法の開発が急務な課題となっています。そこで,石川県工業試験場,メルシャン(株),(株)スギヨ,石川県立大,石川県農業総合研究センター,石川県畜産総合センターと共同で大豆ホエーとオカラを乳酸発酵することにより,新規食材・飼料への活用に取り組みました (経済産業省:戦略的基盤技術高度化支援事業)。

■技術開発の内容
  本事業では,工業試験場の協力をもとに,大豆ホエーを濃縮し,乳酸菌により発酵する方法や条件を検討し,機能性を付与した発酵大豆ホエーを製造する方法を確立しました。また,発酵大豆ホエーとオカラを混合発酵する方法や条件についても検討し,発酵オカラを製造する方法も確立しました。さらに,これらの試験結果を基に,発酵物の大量生産システム(発酵大豆ホエー及び発酵オカラ生産システム)を設計・設置しました(図1)。各処理段階の処理物については分析評価を行い,再現性も確認しております。一方,発酵物の用途開発として既存の大豆加工食品に発酵物を添加した食品や漬け物等の試作に取り組みました。

(図1 発酵大豆ホエー及び発酵オカラ生産システム)

■製品の特徴
  腐敗しやすい大豆ホエー及びオカラは,乳酸菌を加え酸性化することにより,保存性の向上だけでなく機能性も付与され,各分野での利用が可能となりました。また,発酵大豆ホエー及び発酵オカラの生産システムの導入により,大豆ホエーやオカラの有用物質への大量変換が可能となり,廃棄物ゼロの循環型システムの構築の可能性が示唆されました。また,弊社で取り組んだ試作品のうち,既存商品の一部を発酵物で置換した試作の大豆加工食品「豆乳がんも」と「あわせ豆腐」については,工業試験場で分析した結果,既存商品と比べて栄養成分に遜色なく,発酵物の有機酸が機能性成分として生かされた商品であることが明らかとなりました。

■今後の展開
  試作の大豆加工食品「豆乳がんも」と「あわせ豆腐」については商品開発を更に進め,平成23年4月から,県内外での販売を予定しております。