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木製シートを用いた自社ブランド製品の開発

■株式会社谷口 谷口 正晴

■技術開発の背景
  1950年頃から木製碁笥(碁石入れ)の製造販売を開始し,全国シェア日本一のニッチトップ企業となった。多様化する生活者のニーズに対応するため,1980年頃からは木製工芸品・木製家庭用品・家具等の自社製品開発に取り組んでいる。約10年前には木の単板(木を薄く剥いだ板)をランプシェードに用いた電気スタンドを開発した。
  今回,その単板を更に柔らかく丈夫にして革に張りあわせる特殊加工技術を開発し,婦人用バックや財布,名刺入れなどの新商品展開を行った。

■技術開発の内容
  木を薄く剥いで利用する技術は従来からあったが,図1に示す本開発品はその剥いだ木に不織布,ウレタン系接着剤等を使用し強度と弾力性を持たせた。筒状に曲げたり,革と縫製したりしても割れにくく,表面は木そのものの質感・香りを残すことに成功した。
  また,約0.15ミリの板厚のため,材料が少なくて済み,その分乾燥も早いので多用途への製品展開が可能である。開発した木製シートの強度試験や商品化にむけたデザイン開発支援等を工業試験場に依頼した。

(図1 開発した木製シート)

■製品の特徴
  従来の木製品は木を彫ったり,プレスしたりしたものであったが,今回開発した製品は,木製シートを革と縫製した全く新しいものである。
  また,木材を極薄にスライスすることで,材料コストが抑えられることから,希少価値の高い黒柿などの銘木をファッション雑貨に用いることが可能となり,これまでにない高付加価値の商品が展開できた(図2)。

(図2 開発したシートを展開した商品)

■今後の展開
  本開発商品は今年,石川ブランドの金賞を受賞することができた。東京の見本市に出展したところ多くの引き合いを得て,都市圏の大手百貨店で扱うことも決まっている。今後はアイテムのバリエーションを増やし,さらなる商品展開を行う予定である。
  また,木材を薄くスライスした柔軟性のあるシート材料なので,使用する木材が少量で,乾燥も短時間ですみ,間伐材や倒木等の再利用も可能なことから,環境にやさしいエコロジー素材としてさまざまな分野への活用が見込めるものと期待している。