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 建設発生土の再資源化
  北陸エースコン工業株式会社 技術課 辰野 智規*
  福井高専 山田 幹雄、奥村 充司

■技術開発の背景
弊社における業務の主体はリテラ工法,流動化処理工法,気泡混合軽量盛土工法等を採用した地盤改良や汚泥処理であり,県内・外で建設発生土の活用事業を展開している.近年,津幡町内でリテラ工法による地盤改良を施した際に,関係者から当該地域には水素イオン濃度指数(pH)の極端に低い表層土が各所で認められ,そこでの安定処理効果は小さいとの情報を得た.また,ほぼ同じ時期に東北地方の工事担当者から強い酸性を示す土の処理・再利用策に関する相談を受けた.既往の調査,研究事例によれば海成堆積物からなる砂岩,泥岩や凝灰岩が分布する我が国には酸性土の出現箇所が点在するとのことであり,弊社の業務においても今後このような性状の土と遭遇する可能性が高いと判断し,ゼロ・エミッションを念頭に置いた酸性土地盤改良技術の開発に着手することにした.

■技術開発の内容
一般に,パイライト(二硫化鉄)を含む堆積軟岩が掘削等により大気に曝されて水に接触すると硫酸が生成して酸性化が進行する。この反応には硫黄酸化細菌や硫酸還元菌が関与していることから,本件では初めにこれらの菌による酸化メカニズムを水温及び含水比(通気性)を指標にして調べた.その結果,酸化速度は周辺環境が高温・多湿であるほど大きくなること,また,乾燥蒸発−湿潤を繰り返すことで酸素が供給され,酸化が一層進行することが判明した.
次に,セメントや石灰を添加した土がアルカリ雰囲気にある間は長期の強度発現が期待されるが,強酸性の土に同量のセメントや石灰を加えてもアルカリ雰囲気は保持されず,強度の発現は比較的に小さいと考えられる.そこで,改良対象土のpHの違いが安定処理効果に及ぼす影響を確かめるために,pH=6.1の細粒分質砂及びpH=2.7の粘土にセメント系固化材,工業用消石灰をそれぞれ4%(乾燥質量比)添加したときの一軸圧縮強さquを測定したところ,後者の試料土の養生90日におけるquは前者の試料土の1/8〜1/10という結果が得られた.更に,セメント系固化材,工業用消石灰の添加率を4%,6%として作製した供試体のCBRを求めたところ,後者の試料土のCBRは前者の試料土の1/2〜1/4となり,強度の面からも支持力の面からもpHの重要性が明らかとなった.
以上の成果を踏まえて,次の段階ではpH中和材として炭酸カルシウムが主成分である牡蠣殻を有効利用することを予定しており,現在は原殻を粉砕する装置を試行的に稼動している.

■製品(工法)の特徴
@ 改良対象土と安定材とを混合する施工機械(土質改良機−リテラ-連続攪拌)−写真@
A 改良対象土と安定材とを混合する施工機械(土質改良機−HAR-V−バッチ式)−写真A
B 牡蠣殻粉砕機−写真B(通常は他の用途に使う機械を転用.粉砕機は試作中.)
C 粉砕殻−写真C

■今後の展開
室内試験・・・一軸圧縮試験,CBR試験,コーン貫入試験による強度及び支持力特性の把握.
屋外試験・・・粉砕殻を土の乾燥重量に対して10ないし20%混入した土層を設けて「簡易支持力測定器」により換算CBR,換算K30の経時変化を調査する.

補足資料

改良対象土と安定材とを混合する施工機械 改良対象土と安定材とを混合する施工機械
(土質改良機−リテラ-連続攪拌)−写真@(土質改良機−HAR-V−バッチ式)−写真A

牡蠣殻粉砕機−写真B                 粉砕殻−写真C
(通常は他の用途に使う機械を転用)


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