−研究紹介−「自立促進型簡易ハウスの開発研究」

●高橋哲郎
(製品科学部)

1.はじめに
 現在,高齢者や障害者の在宅復帰を促進するために,住宅の増改築が盛んに行われるようになってきました。しかし,建築士や施工者に医療的な知識がない場合は,住宅設計や福祉用具の選定が困難であり,また,依頼者側としても,増改築の費用や時間,不要になったときの処理などが問題になっています。
 工業試験場では,これらの問題を解決する一つの手段として,在宅生活に必要な設備機器や福祉用具をあらかじめ装備した自立促進型簡易ハウスの開発を行いました。

2.内容
 本研究は,以下の内容で県リハビリテーションセンターと県内企業の協力を得て進めました。
1)設計と試作
@寸法:県内の住宅やプレハブメーカーの現状調査により,一戸建住宅の空地(庭)面積と輸送車の積載寸法から算出し,長さ6,200o×幅2,400o×高さ2,700oとしました。
A構造:軽量鉄骨構造のパネル工法とし,高気密,高断熱を配慮した外壁材,サッシを採用しました。
B間取:動線を短くするため,寝室,トイレ,浴室を直線的に配置し,各スペースに車いすの回転範囲(直径1,500o)を確保しました。
C設備:歩行障害者や車いす利用者が共通して扱えるベッド,洗面台,便器,浴槽,水栓具,照明スイッチ,手すりなどを選定し,自立動作ができるように配置しました。また,天井走行リフトの設置により,重度四肢麻痺者にも対応した環境整備を行いました。
2)実証評価と今後の計画
 試作した簡易ハウスで,実際に障害を持つ被検者(パーキンソン氏病,片麻痺,対麻痺,四肢麻痺)による動作分析を行った結果,それぞれの動作能力に適合し,利用しやすい環境が整ったことが確認されました。
 現在,住宅との接合,配管,基礎部分について改良を加えており,間もなく実用段階に入ります。将来的には,一般住宅の増改築のほか,集合老人施設(生活棟,食堂棟等)への応用も視野に入れた製品化を目指しています。

3.結 果
 福祉用具を開発する場合,高齢者や障害者の身体特性の把握がきわめて重要になります。また,あと数年で国民の4分の1が高齢者になるため,一般の製品においても,これまでの開発手法を見直す必要性が出てきます。
 このため,より多くの身体特性データを集積し,企業の製品開発を支援していきたいと考えています。
 なお,本研究はNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託研究事業で実施しました。




自立促進型簡易ハウスの外観と室内環境


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