超音波リニアモータの耐久性向上  ―超音波リニアモータの用途拡大に向けて―

 工業試験場では、圧電素子の利用拡大を目的とし、これまで企業と共同で超音波リニアモータの研究開発を行ってきました。開発したモータは、小型、高分解能という特徴を持つものの、耐久距離が数十kmと短く、適用がミラーの調整機構等の駆動距離の短い用途に限られていました。モータは図1に示すように振動子の楕円運動による摩擦力でスライダを駆動する仕組みであり、摩擦接触部に摩耗が生じます。この摩耗が駆動距離低下の要因と考えられます。

 そこで本研究では耐久性向上を目的に、摩耗によるモータ速度低下のメカニズムを検討しました。その結果、摩耗による接触面積の増加がモータ速度低下の原因であることがわかり、摩耗しても接触面積が増加しない摩擦接触部形状を考案、試作しました(図2参照)。試作したモータは1500km駆動後でも速度低下が無く、安定した性能を維持したことから、位置決め用自動ステージ等への応用が可能となり、製品化に取り組んでいます。

 今後も真空用ステージ等の用途拡大に向けた技術支援を引き続き行っていく予定です。


図1 超音波リニアモータの駆動原理


図2 摩擦接触部の摩耗による形状変化

 

担当:機械金属部 高野 昌宏(たかの まさひろ)

専門:材料力学、振動工学

一言:新しい技術、製品の開発を目指します。