耐食性評価に新しい手法を導入  ―電気化学試験によるステンレス材料の耐食性評価―

 工業試験場では、金属材料の耐食性評価を塩水噴霧試験やキャス試験で行っています。ステンレス等の高耐食材料の評価は、キャス試験で行いますが試験が数百時間におよぶ場合があり、試験時間の短縮が望まれていました。そこで、アノード分極測定装置を導入しました(平成23年度JKA設備拡充補助事業)。

 この装置を用いた耐食性評価の一例として、ステンレス材料の孔食電位測定(JIS G0577)を紹介します(孔食:ステンレスの腐食時に発生する小さなくぼみ)。本測定は、得られた波形より、酸化皮膜が破壊に至ったときの電位を求めることにより、1時間程度で耐食性が評価できます。

 図に製造元の異なる2種類のステンレス(SUS304)サンプル(A、B)の孔食電位測定結果を示します。サンプルAでは電位0.12V付近から酸化皮膜の破壊が始まり、0.21V付近で破壊に至りました。一方、サンプルBでは0.22V付近から酸化皮膜の破壊が始まり、0.27V付近で破壊に至りました。この結果より、サンプルBの方がより高い電位で酸化皮膜の破壊に至っており、サンプルAよりも高い耐食性が示されました。サンプルBは適切な熱処理がされており組織が良好であるため、高い耐食性を示したと考えられます。

 ステンレスの耐食性評価の際は、キャス試験と合わせてアノード分極測定装置による手法もご検討ください。


SUS304の孔食電位測定結果

 

担当:化学食品部 上村 彰宏(うえむら あきひろ)

専門:表面改質

一言:材料の耐食性評価にお役立てください。