硬質膜の密着性評価  ―密着性評価にスクラッチ試験機を活用―

 機械部品に用いられる炭素系膜、セラミック系膜、金属めっきなどの硬質膜に要求される性能はますます厳しくなっています。その中でも密着性は最も重要であり、この特性が製品の優劣を決定づけます。そのため、工業試験場では、スクラッチ試験機を新たに導入し、硬質膜の密着性評価を行っています。

 スクラッチ試験は図1に示すように、原理的には膜の表面に押しつけたダイヤモンド圧子の荷重を増加させながら引っ掻く簡便な方法で、主に炭素系膜、セラミック系膜の評価ができます。図2に、金型や工具に用いられるダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜の評価例を紹介します。スクラッチ試験では、(a)に示すように摩擦係数と膜の破壊音(AE)を計測し、波形の変動から剥離の発生とその荷重がわかります。さらに、剥離発生位置における膜の状態が、引っ掻き動作に連動した顕微鏡写真(b)のように観察できます。

 一方、延性のある金属めっきの密着性評価では、この方法は製品間の定性的な比較に利用されます。工業試験場では、本スクラッチ試験法を用いた金属めっきの密着力の定量的評価に関する研究に取り組んでいます。密着性評価についてのご要望がありましたら、お気軽にご相談ください。


図1 スクラッチ試験機の概略


図2 DLC膜の試験結果

 

担当:機械金属部 鷹合 滋樹(たかごう しげき)

専門:破損解析、表面処理

一言:製品クレームから新しい技術を掘り起こします。