減塩いしりの開発と商品化  ―能登のいしりをより使い易く―

 いしりは能登地方で古くから伝統的手法で作られているイカやイワシを原料とする魚醤油(ぎょしょうゆ)です。旨み成分であるグルタミン酸、アラニンなどのアミノ酸を多く含み、抗酸化性、血圧上昇抑制効果などの機能性成分を豊富に含んでいます。一方で、塩分が25%程度と高く、さらなる需要拡大のためには減塩が望まれています。

 工業試験場は、県内の企業、石川県立大学、県水産総合センターと共同で、電気透析処理技術を応用し、いしりの旨み成分と機能性成分を維持したまま塩分のみを除去する技術を確立しました。微細孔を持つ膜に挟まれたいしりに電気を流すことで、分子径の小さい塩分は膜を通過して取り除かれ、分子径の大きいアミノ酸などの有用成分は残存する仕組みです。本処理で塩分を15%以下(大豆醤油レベル)に低減した「減塩いしり」は、塩辛さが抑えられ、いしり特有の旨みが濃厚に感じられます。また、焼酎を加えることにより保存性を高めています。

 本技術で製造した減塩いしりが、「石川のこだわり商品フェア2011」にて、車多酒造(株)、(有)カネイシ、(株)ヤマトより発売されました。今後は、減塩いしりの増産に向けた技術支援を行っていきます。


□開発した減塩いしり

 

担当:化学食品部 笹木哲也(ささき てつや)

専門:食品化学、分析化学

一言:県産伝統食品の魅力を活かす研究をしています。