電磁界解析によるアンテナ設計支援  ―アンテナへの供給電力の最適化―

 電子機器の高性能化・高機能化を達成するには、電子回路に流れる信号の品質を把握し、最良な設計を行う必要があります。また、アンテナ搭載機器では、アンテナから放射する電磁波の指向性・利得などを設計段階で検証しておくことが重要となっています。近年のコンピュータによる電磁界解析技術の発展により、電子回路上での信号の流れや反射・透過の様子を計算によって求めることができるようになりました。また、信号が電磁波となって放射する様子を解析することもできます。

 工業試験場では、県内企業の電子機器の開発を支援するため、電磁界解析が可能な3次元電磁界シミュレータを導入しました(平成22年度 地域活性化交付金)。ここでは、本システムを活用し、県内企業とアンテナへの供給電力の最適化について検討した例を紹介します。

 図左は、RFID(無線を用いた個体識別技術の一種)リーダライタ用小型アンテナをモデル化したものです。給電点位置dを変更しながら、供給した電力に対する反射量を計算することにより、電力供給点の最適な位置を見つけだすことができました。図下より、d=0.7mmの場合に反射量が最も小さくなり、供給した電力が効率よくアンテナに入っていることがわかります。

 このような解析のほか、放射電磁波強度や分布、伝搬経路、電子回路の高周波信号等の電磁界解析が可能ですので、ぜひご相談ください。

□アンテナの解析モデルと電力反射量解析例

 

担当:電子情報部 吉村慶之(よしむら よしゆき)

専門:電磁波計測、電磁波の遮蔽と吸収

一言:見えない電磁波の見える化に努めています。