スーパー二相ステンレス鋳鋼の性能評価  ―鋳鋼品の需要拡大に向けて―

 化学プラントや海水熱交換器等の高温腐食環境下では、ステンレス鋼(SUS316)でさえも容易に腐食損傷(SCC)を起こします。そこで、高い耐SCC性を持つフェライト系と溶接性が良好なオーステナイト系ステンレスの特長をあわせ持った二相ステンレス鋳鋼(SCS10、ASTM Grade 6Aなど)が注目されています。

 特に高強度で高耐食性を示すスーパー二相ステンレスは、合金成分として、窒素(N)、タングステン(W)、銅などを含みますが、鋳鋼品の製造においては含有成分が変化しやすく、熱処理後の強度がバラつきやすいなどの課題があります。

 そこで工業試験場では、高級鋳鋼(株)(白山市)と共同でスーパー二相ステンレス鋳鋼品における(1)NやWの量と機械的性質および耐腐食性の関係、(2)熱処理条件と機械的性質の関係を評価しました。その結果、合金成分による機械的性質や腐食特性(図1)が把握でき、また、肉厚製品では衝撃値の低下を招く鋳造組織(図2)の残存に注意し、熱処理条件を選定する重要性がわかりました。

 高級鋳鋼(株)は、この成果によって、スーパー二相ステンレス鋳鋼品の製造技術を確立し、昨年11月に(株)日立プラントテクノロジーで開催された石川県技術提案型展示商談会で技術提案を行いました。


図1 NやW添加による腐食への影響

図2 ASTM 6Aの熱処理よる金属組織の変化

 

担当:機械金属部 谷内大世(やち たいせい)

専門:金属材料

一言:熱処理技術を通じて企業の技術支援に努めます。