電子・機械部品の新たな解析方法  ―電子顕微鏡を用いた結晶構造の分布観察―

 電子部品等のめっきは、接合部の密着性を向上させるために同じ種類の材料で多層構造を形成することがよくあります。図は、銅を積層した一般的なプリント基板の上に製法の異なる銅を2層(銅めっき層[1]、[2])作製した試料の断面図です。この場合、材料が同じであるため、電子顕微鏡像(図左)や元素分析では各層が識別できません。したがって、各層の厚さ測定や剥離等の原因となっている層の特定ができませんでした。

 工業試験場に新たに導入した電子線後方散乱回折(EBSD)装置により、同じ種類の金属でも原子の並び方の違い(結晶構造)を視覚化して識別することが可能になりました。図右の色分けは結晶の向き(111、001、101の3方向)に対応しており、プリント基板の銅層及びめっき層[1]、[2]が識別できるため、剥離らしき隙間が層の境界で発生していることが分かります。

 このような結晶構造の分布は、熱処理や圧延の前後でも変化し、電気伝導率や機械的強度など様々な物性に影響します。このことから、本装置は結晶構造解析に限らず、材料物性解析などにも活用することができます。

 本装置を活用し、不具合解析や材料開発についてより一層の支援を行っていきます。


プリント基板の断面の電子顕微鏡画像(左)及び結晶構造の分布(右)

 

担当:電子情報部 的場彰成 (まとば あきなり)

専門:熱電材料、結晶構造解析

一言:分析技術に関するご相談をお待ちしております。