場長就任のごあいさつ

場長 吉田 繁 [よし だ しげる]

 

 去る3月に、東日本大震災という我が国にとって未曾有の災害が発生しました。被災された皆様方に対しお見舞いを申し上げますとともに命を失われた方々のご冥福を心からお祈りいたします。着任からこれまで、大震災の県内企業への影響を憂慮しつつ、工業試験場の果たすべき役割について認識を新たにしているところです。

 近年の世界経済はめまぐるしく変動し、それまで好調であった県内産業は、平成20年9月からのリーマンショックを機に景気後退の大きなうねりに飲み込まれました。工業試験場では業界の要望を受けて、例年以上に従業員の方々のための講習会を開催するとともに、モノづくりに係る技術開発を積極的に支援してまいりました。そして、その影響も落ち着いたかにみえたこの春、大震災が発生した次第です。

 この間、県では平成17年3月に策定した「石川県産業革新戦略」を見直し、基幹産業のさらなる競争力強化、次世代産業の創造等を基本戦略とする新たな戦略を策定しています。この方針に基づき、県では科学技術振興機構(JST)の地域産学官共同研究拠点整備事業に提案し、平成21年12月に「いしかわ次世代産業創造支援センター」の採択を受けました。

 工業試験場敷地内に建設された同センターは、これからの本県経済の一翼を担う次世代産業の創出・育成に向け、産学官の研究拠点として整備されたものであります。工業試験場は、「中小企業の試験室・実験室」として、設計試作から生産までの一貫したモノづくりを支援する試作機器と高度計測評価機器を整備し、基幹産業の技術力強化を支援してきたところでありますが、センターの活用促進を図ることで次世代産業の創造にも積極的に支援してまいる所存であります。

 大震災とそれに続く原発事故の発生など、県内産業への影響を容易に予測できない状況が続いておりますが、工業試験場としては、職員一丸となって、業界のニーズを的確に把握した上で、「技術指導」、「依頼試験」、「研究開発」の面から、県内モノづくり産業の技術力高度化を支援すべく業務に取り組んでまいります。

 従来にもましてのご支援、ご協力をお願いいたしまして新任のご挨拶といたします。

 


− いしかわ次世代産業創造支援センターの開所にあたり −

いしかわ次世代産業創造支援センター長 中野 幸一 [なかの  こういち] (工業試験場 次長)

 

 去る4月13日に「いしかわ次世代産業創造支援センター」の開所式が行われました。多くのご来賓の方々に出席を賜り、ここにあらためて感謝申し上げます。

 当センターは、既存施設であります食品加工実験棟を拡張し、次世代産業として今後成長が見込まれる「炭素繊維」、「機能性食品」の開発を重点に支援していくものであります。

 「炭素繊維」関連では、自動車や民生品への活用が期待される熱可塑性炭素繊維複合材料(熱可塑性CFRP)の加工技術の確立とその用途の拡大を目指し、「機能性食品」関連では、これまでの石川の伝統食品を活かした機能性食品の開発に一層力を注いでいきます。本県の強みでありますモノづくり産業を基盤としまして、異分野・異業種の技術融合と大学・公設試による産学官連携の下、「次世代産業」の具現化と本県産業の発展に結びつけたいものと願っております。

 なお、当センターの主要な設備について、本誌におきまして今回を含め3回のシリーズにわたり、ご紹介してまいります。是非ともご活用いただけることを期待しております。