九谷焼の強度向上技術の開発  ―業務用食器への応用を目指して―

 九谷焼では学校給食用食器として強化磁器を生産しています。強化磁器は粘土と釉薬に特別な調整を施す必要があり、上絵具と熱膨張率が異なるために上絵加飾をすることができません。一方、通常の九谷焼食器は造りが薄く、繊細な形状が多いため、割れやすいイメージがあります。そこで、九谷焼らしい上絵加飾が可能で、かつ、高い強度を併せ持つ白素地の開発を行いました。

 アルミナ粉を加えた素地粘土と、酸化亜鉛を加えた釉薬の組み合わせにより作製した白素地は、従来の九谷焼素地と比較して強度が1.5倍に向上しました。なお、強度の測定は、食器としての活用を検討するため、従来の曲げ強度試験ではなく、試料に直接衝撃を与える衝撃強度試験で行いました。さらに、食器の耐衝撃性には縁形状の影響があり、業務用食器としての必要強度を得るためには形状の選択が重要であることが分かりました。また、焼成温度の異なる無鉛絵具で上絵加飾試験を行った結果、800℃焼成の低温化無鉛絵具は、開発した白素地の全面に加飾しても剥離等が発生せず、良好な結果を得ることができました。

 この強度向上技術は、簡易的な方法で応用できますので、今後、業務用食器への応用展開を目指して行きたいと考えています。


開発した九谷焼食器サンプル

 

担当:九谷焼技術センター 高橋 宏(たかはし ひろし)

専門:陶磁器

一言:九谷焼の伝統を守る一助になりたいと考えています。