微生物を用いた土壌修復技術を開発  ―新規微生物の有効性を現場汚染土壌で確認―

 今年4月の土壌汚染対策法の改正により、汚染土壌の搬出・運搬に関する規制が強化されたため、汚染現場において浄化する手法が注目されています。これまで油汚染土壌の多くは掘削除去で修復されていますが、微生物を用いた土壌修復は工場や給油所の営業を停止することなく、低コストで現場浄化できる手法として期待されています。しかし、修復に時間を要することが短所であり、効率化が課題となっています。

 工業試験場では平成17年より燃料油を分解する微生物の分離に取り組み、A重油の給油口から高い分解活性を示す微生物の分離に成功しました。この微生物はDNA解析などにより新規性が認められ、マウスを用いた毒性試験からは安全性が確認されました。

 そこで、この新規微生物を従来の油分解微生物に混合し、ガソリン汚染土壌のフィールド試験を実施しました。その結果、従来微生物のみの区画では浄化に4〜6ヶ月間要したのに対し、新規微生物を混合した区画は2ヶ月間以内に浄化が完了し、新規微生物の有効性が認められました。

 研究成果は(株)ゲイト(野々市町)に技術移転され、油汚染土壌の修復に実用化が図られています。今後は、現場における土壌修復のデータを蓄積しながら、さらなる効率的な修復技術の開発を支援していきます。


新規微生物を用いたフィールド試験の結果

 

担当:化学食品部 井上智実(いのうえ ともみ)

専門:微生物工学

一言:微生物はあらゆる分野で活躍しています。