超音波測定器の電子回路開発を指導  ―工業試験場の設備を活用して試作開発を支援―

 工業試験場には、電子回路開発の手順に沿って活用できる設備として、電子回路をパソコンで設計する「プリント基板CAD/CAEシステム」、設計された電子回路データから回路配線された基板を作る「プリント基板試作システム」、デジタル回路をFPGA(書換え可能なLSI)に構築する「FPGA作製システム」が導入されています。ここでは、(有)ライブエイド(金沢市)が、上記の設備を活用して開発した、人の骨の健康度を計る超音波測定器(図1)の技術指導事例を紹介します。

 超音波で骨の健康度を測定するには、図2のように超音波トランスデューサ(超音波発信器)に1000ボルトに近い電圧の送信パルスを印加し、人骨を通り抜けて超音波レシーバ(超音波受信器)側に現れる1/1000ボルト単位の微小な受信信号を捉える必要があります。この回路設計は、高電圧信号と微小電圧信号を一枚の電子基板で取り扱うため、非常に難しい事例です。そこで、事前に「プリント基板CAD/CAEシステム」を用いて高電圧信号が回路のどの部分に影響を与えるかをシミュレーションで確認し、該当部をコンパクト化した上で、高電圧生成に使用される電源部を隔離することにより、微小な受信信号への影響を極力押さえ込むように設計しました。また、この受信信号はノイズ成分を含むため、必要な波形はそのままで、ノイズ成分だけを1/2に減らすデジタルフィルタを内蔵したFPGAを「FPGA作製システム」を用いて設計しました。このFPGAは、骨の健康度測定に必要な信号を正しく選択、抽出する役割を担っています。

 電子回路データの設計が完了した後、「プリント基板試作システム」により回路配線された基板を作製します。これに電子部品をハンダ付けすると試作基板(図3上)が仕上がります。この試作基板は、電子回路設計の時点で高電圧信号の取扱いに注意して設計されたため、非常にきれいな受信信号を取り込むことができました。また、長時間動作時の安定性も確認できました。この設計データをもとに製造された量産基板(図3下)は、現在、出荷されている製品に搭載されています。

 工業試験場では、このような開発に関わる技術支援を積極的に行なっております。電子回路でお困りのことがありましたら是非ご相談ください。

 


図1 骨の健康度測定器

図2 測定ユニットのブロック図



図3 試作基板から量産基板へ

 

担当:電子情報部 田村陽一(たむら よういち)

専門:電子回路

一言:デジタル/アナログ電子回路のご相談承ります。