電波吸収体の設計を効率化  ―材料定数測定システムを開発―

 電波吸収体は、ETCレーンでの誤通信や無線LANの情報漏洩、電子機器の誤動作の防止など、身の回りの様々な所で役立てられています。従来、この電波吸収体の開発は、目的とする吸収性能が得られるまで試料(電波吸収体)の設計・試作と性能評価を試行錯誤により何度も繰り返しており、開発に多くの時間や費用がかかっていました。

 工業試験場では電波吸収体を効率的に設計するため、材料定数を簡便に測定するシステムを開発しました(図参照)。材料定数とは、電波吸収体の設計に必要な電波吸収量を決定付ける値(誘電率や透磁率)であり、特定の範囲の値においてのみ高い電波吸収量を示します。この材料定数を測定することにより、設計段階で吸収量の事前予測が可能となり、開発の効率化を図ることができます。例えば、電波吸収体を構成する材料の混合割合を変えることで材料定数が変化する傾向を掴めます。そこで、この混合割合を適切に調整することで、所望の吸収量を示す電波吸収体の設計が可能となります。これにより、従来の開発よりも試料の作製数を減らし、開発期間や試作費用を削減できます。なお、今回開発したシステムでは、誘電体レンズの採用により、測定に必要な試料寸法の小型化を達成しました。また、電波吸収量に加え反射量や透過量データの測定を可能として、材料定数の算出精度の向上を図っています。電波吸収体を開発する際は是非、本システムをご利用下さい。



開発した測定システム

 

担当:電子情報部 杉浦宏和(すぎうら ひろかず)

専門:電磁波計測、アンテナ工学

一言:電波の新たな可能性を探しませんか?