陶磁器からの鉛・カドミウムの溶出基準  ― 食品衛生法の改正への対応 ―

 九谷焼は、高い透明感と「九谷五彩」と呼ばれる色鮮やかな上絵具を用いた装飾が大きな特長です。上絵具は、800℃前後での溶融と透明感を生み出すために酸化鉛を含んでいます。上絵を施した食器に酸性の食品が長時間接触した場合に、微量ですが鉛が溶け出す恐れがあります。このため、食品衛生法により「陶磁器製品の鉛の溶出*規格基準」が定められており、今年度、この基準の強化が行われました (右表:黄色は新設された基準)。近年、食の安全性が注目を集めるなか、非常に厳しい値になっています。

 工業試験場では、無鉛五彩の開発を行い、業界への技術移転及び普及活動を行ってきました。今では、無鉛絵具は製品化され、これを使用した九谷焼製品も増えてきています。更に、現在も業界からの要望から、より使用しやすい無鉛和絵具への改良研究や、随時、鉛及びカドミウムの溶出試験も行っていますので、ぜひお気軽にご相談ください。


陶磁器からの鉛及びカドミウムの新溶出規格基準
*: 溶出とは、容器に4%酢酸溶液(食酢と同濃度)を満たし、室温22±2℃で24時間静置し、酢酸溶液中に溶け出してくる鉛やカドミウムのこと。
下段の( )内の数値は改正前の数値

 

担当:九谷焼技術センター 木村裕之(きむらひろゆき)

専門:陶磁器

一言:食の安全性に注目が集まっています。法令を遵守しましょう。