窒化ホウ素(BN)膜の作製  ― 絞り金型へのコーティングを目指して ―

 窒化ホウ素(BN)膜は、ダイヤモンドに次ぐ硬さと低い摩擦係数(すべりやすさ)をもつことから、二体が接触する機械要素や機械部品、特に鋼系材料に対して適用が期待されている膜ですが、未だ実用化されていません。

 そこで、工業試験場では、液体有機金属であるトリメチルボレート(TMB:B(OCH33)を出発原料として、プラズマMOCVD(有機金属気相成長)法により新たな構造のBN膜を作製しました。その膜構造は、六方晶構造の結晶hBN膜中に、ホウ酸(H3BO3)と立方晶構造である高硬度のcBN微結晶が混在したものであることがわかりました。

 この新しいBN系の膜を、薄板の絞り加工用金型のメス型(内径Φ50mm×深さ15mm)へコーティングしました。下図に示すように、コーティング後のメス型は、穴の内面にも成膜されていることが確認できました。

 工業試験場で作製した新しい構造のBN系膜の硬さは、19GPaとなり、焼入鋼の硬さ(9GPa以下)の2倍以上を実現しました。今後、さらなる高硬度化と密着性向上を目指して、県内メーカと共同で研究を進めていきます。


作製したBN系膜の絞り金型への適用例

担当:機械金属部 安井治之(やすいはるゆき)

専門:表面改質、材料力学

一言:石川県から新しいコーティング膜を発信します!