漆の耐久性向上への期待  ―漆の耐久性の向上による新領域開拓の可能性―

 漆器を含めた伝統工芸品の売り上げは、最盛期の40%以下に落ちています。こうした状況を打破する一つの方策に、漆の耐久性(耐候性、耐水性等)を高め、工業製品や家具、建築等の新分野への進出が考えられます。

 そこで、漆に対する意識と求められる課題を探るために、平成19年度に一般生活者400人を対象としたインターネット調査と、自動車や家電メーカー、建築家や百貨店等有識者9人を対象にヒアリング調査を行いました。

 インターネット調査の結果、長所は高級感と上質な質感。短所は手入れが面倒で難しい。購入に際しては、安心できる素材としての期待や、若い世代の一部は、高くても長く大事に使いたいという回答を寄せてきました。

 漆の耐久性向上に対する期待は「キズがつきにくく他の食器と一緒に洗える」(82.8%)がトップ。「食器洗浄機で洗える漆器」(58%)は下位でしたが、百貨店からは、食器洗浄機はかなり普及しているので、出来ることならこの課題を解決して欲しいという期待が寄せられました。

 ヒアリング調査では、家具や建築関係者は漆の耐久性向上に高い関心を示し、家電や自動車関係者は「工業製品の品質基準は厳しいので、交換可能なカバーやパーツという考え方もあるが、使ってみたいと思わせる漆の魅力を言葉で説明して欲しい。」と指摘されました。

 こうした調査結果は、今後の漆の研究や産地での技術指導に役立てていきたいと考えています。

担当:繊維生活部 松山治彰(まつやまはるあき)

専門:デザイン振興、商品開発、販路開拓

一言:漆は日本人の心と技。しかし、漆が産業として持続するためには、その良さを言葉で伝え、新たな市場を開拓していくことが大切です。