最近の鉄鋼分析試験の傾向と対応 ―品質管理のすすめ―

 最近、鉄鋼材などの分析試験では、海外調達品や環境規制対応(RoHS、ELV等)の検査が増加しています。これは、調達品の品質不良や成分偽装が懸念されるためです。品質管理を怠り不良品があった場合、多大な損害を被るため、日常から品質管理を徹底する必要があります。ここでは、鉄鋼材の分析試験を例にとり、工業試験場の対応を紹介します。

 まず、簡易分析(開放試験、依頼試験)としてエネルギー分散型蛍光X線分析装置(XGT)が利用できます。この機器では、材種判定や有害元素のスクリーニング分析などが迅速に行えます。また、局所的な成分分析は電子線マイクロアナライザ(EPMA)で測定できます。これらの簡易分析で判別がつかない鉄鋼材は、精密分析(依頼試験)で対応しています。鉄鋼材中の炭素・硫黄は、燃焼-赤外線吸収法による炭素硫黄分析装置(CS)で測定します。その他の成分については、定形試料(Φ35〜50mm)であれば波長分散型蛍光X線分析装置(XRF)によって分析が可能です。なお、これらの試験はISO17025に基づく国際試験所認定を受けています。非定形試料(切削粉、粉末等)では、酸分解を行い溶液状態にした後で、プラズマ発光を利用した高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP)や吸光を利用した原子吸光分析装置(AA)で成分分析を行います。

 鉄鋼材の受け入れ検査などの品質管理に、ぜひこれらの装置をご活用ください。

鉄鋼材の分析スキーム


担当:化学食品部 嶋田 一裕(しまだ かずひろ)

専門:分析化学、界面化学

一言:品質管理に工業試験場をご活用ください。