シミュレーション解析によるロストワックス鋳造品の不良低減

 鋳造品において、湯回り不良や巣等の鋳造欠陥を減らすには、欠陥発生原因の正確な把握が必要です。そのためには、鋳型温度や溶湯温度等の鋳造条件と欠陥の位置や種類との対応を検討し、欠陥発生のメカニズムを推定することが有効です。今回は、ロストワックス鋳造品の不具合解析の事例を紹介します。

 欠陥発生原因の特定は、右下図のフローに示すとおり、まず、不良種類の分類や発生箇所等のデータ収集を行いました。その後、金属組織観察、鋳造シミュレーション解析等により欠陥発生のメカニズムを考察した結果、以下のことがわかりました。

 (1)溶湯温度と鋳型温度の温度低下に対する欠陥発生率をデータ収集し、因果関係を考察したところ、鋳型の温度低下が、湯回り不良へ及ぼす影響は小さいことがわかりました。

 (2)不良発生位置の分析と断面組織の観察から、少量の溶湯が鋳型内で凝固し、その後に充填された溶湯と結合したものと推察されました。

 (3)注湯時の湯流れ挙動を鋳造シミュレーション解析で検証しました。先に推察したとおり、不良発生位置においては、注湯時に少量の溶湯が先に進入し、その後、溶湯が充填される過程が確認できました。

 工業試験場では、このように企業に対するモノづくりの支援を行っております。技術的課題でお困りの方はご相談ください。


不良低減方法の提案までの流れ

担当:機械金属部 藤井 要(ふじいかなめ)

専門:金属工学

一言:シミュレーション解析と分析技術の両方で鋳造品のモノづくりを支援します。