適合性評価と試験所認定制度(ISO17025)  ―信頼され、利用される試験機関を目指して―

 経済活動のグローバル化に伴い、製品の品質を保証する適合性評価の仕組みが各種国際標準規格(ISO/ IEC規格)で規定・整備され、浸透してきています。この適合性評価の仕組みは第三者機関による登録・認証を基本としており、その評価対象は単に製品だけにとどまらず、プロセス、原材料やサンプル、機材・機器、さらにはそれらの製造・流通等に関わる組織の品質管理システムまで広範囲にわたります。そして、これら評価対象に対する評価機関の能力とその認定ルールについても系統的に規定されています。このうち、原材料やサンプルを試験する試験機関に対して定められたのが「試験所認定制度」です。認定試験所には国際標準(ISO/IEC17025)に適合する試験能力とその維持管理が求められる一方、その認定範囲において発行する成績書が世界中どこでも通用することを示す認定登録ロゴの表示が認められます。

 工業試験場では、他県の公設試験場に先駆け、平成13年度から繊維、機械、化学の分野で順次試験所の認定を受けてきました。また、昨年度は認定機関を一本化し、業界ニーズに対応して認定分野の拡大、変更が容易に行える体制としました。そして、今年度は電子分野での認定取得を計画しています。さらには、試験所認定制度の場内職員への研修により、認定分野に関わらず、担当する試験業務の作業改善や品質管理等の意識改革を推進しています。表1に当試験所の認定分野を、図1に登録ロゴを示します。

 最近は、原材料から製品に至るまでモノの流れに試験データがついて回る時代になってきています。適合性評価の枠組みの中では、製造業をはじめとする企業の皆さんにも品質や環境配慮に対する管理の体制・仕組み(ISO9001、ISO14001)を持つことが求められています。製品の信頼性と組織の信用を得るためには、事後処理より事前対策が必要な時代と言えます。認定試験所や試験機関が発行する成績書の活用も含め、これまで以上に品質管理に対する企業自らの取り組みが必要となります。

 工業試験場では、皆さまの試験機関として、試験の質・量の向上と地域への貢献を目指しています。従来から依頼試験や開放試験は規格判定やクレーム処理、欠点解析のほか、開発や品質管理目的にも利用されてきましたが、自社管理の取り組みや仕組みづくりへの活用は事前対策の立場からますます有用と考えています。また、そのような観点から関連する技術指導や研修等も行っていますので、ぜひお気軽にご利用、ご相談ください。



表1 石川県工場試験場の試験所認定範囲

登録・認定分野 取得年度
繊維生活部担当分野
  繊維引張強さ試験
  高分子引張試験
平成13年度
機械金属部担当分野
  金属材料引張試験
  金属材料曲げ試験
  ロックウェル硬さ試験
平成14年度
化学食品部担当分野
   鉄鋼材料の炭素硫黄分析
   (燃焼−赤外線吸収法)
   鉄鋼材料の蛍光X線分析
平成15年度
電子情報部担当分野
   耐久性・耐食性試験
平成19年度
(予定)


図1 石川県工場試験場の試験所認定・登録ロゴ


担当:化学食品部 田畑 裕之(たばたひろゆき)

専門:材料化学、分析化学

一言:品質管理は事後処理より事前対策!依頼試験、開放試験をご活用ください。