電子機器の耐電磁ノイズ試験  ―規格に対応したイミュニティ試験―

 電子機器は様々な電磁環境下で使用されるため、電磁ノイズに対するイミュニティ(耐性)を確認し、製品の品質を向上させる必要があります。IEC(国際電気標準会議)やJIS(日本工業規格)では、様々な電磁環境を模擬できる各種試験装置を用いて、製品の電磁ノイズに対する耐性試験を実施するよう要求しています。ここでは、工業試験場で実施可能なイミュニティ試験について、IECやJIS規格をもとにご紹介します。なお、詳細については工業試験場でこれらの試験に関するJIS規格を取り揃えていますのでご参照ください。

(1) 静電気放電イミュニティ試験
  使用者からの静電気放電に対する電気・電子装置のイミュニティ試験

(2) 放射無線周波数電磁界イミュニティ試験
  無線放射エネルギーに対する電気・電子装置のイミュニティ試験(図1参照)

(3) 電気的ファストトランジェント/バーストイミュニティ試験
  高速な繰り返しのある電気的パルスに対する電気・電子装置のイミュニティ試験

(4) サージイミュニティ試験
 スイッチング及び雷の過渡現象からの過電圧によって発生する高電圧、高電流が電気・電子機器の電力線や信号線へ重畳することによるイミュニティ試験

(5) 無線周波電磁界によって誘導する伝導妨害に対するイミュニティ試験
 無線周波送信機から受ける電磁妨害が電気・電子装置の電力線、あるいは信号線へ重畳することに対するイミュニティ試験

(6) 電源周波数磁界イミュニティ試験
 電源周波数(50Hz/60Hz)磁気妨害に対する電気・電子装置のイミュニティ試験(図2参照)

(7) 電圧ディップ、短時間停電及び電圧変化に対するイミュニティ試験
 電圧ディップ(降下)、短時間停電及び電圧変化に対する電気・電子装置のイミュニティ試験

(8) 電圧変動イミュニティ試験
  正負の小さな振幅の電圧変動に対する電気・電子装置のイミュニティ試験

 電子技術の高度化に伴い、試験周波数の拡張や試験レベルの拡大などに見られるように、その規格内容は厳しくなってきています。工業試験場では、これらの規格に対応したイミュニティ試験が実施できるよう設備を整備しており、さらに、電子機器から放射される電磁ノイズに対する測定設備も設置しています。これらの設備は所定の使用料により企業の方が実際に利用できる開放試験設備となっています。また、試験設備の操作説明会、EMC研究会石川によるノイズ対策に関する勉強会や講習会、技術アドバイザーによる指導事業を展開しています。お気軽にご相談、ご利用ください。


図1 放射無線周波数電磁界イミュニティ試験
(1〜4GHzの周波数帯域での試験)

図2 電源周波数磁界イミュニティ試験


担当:電子情報部 吉村 慶之(よしむらよしゆき)

専門:電磁波計測、電磁波シールド、電波吸収

一言:見えない電磁波の事象を数値や色で確認できるように努めています。