金属熱処理製品の非破壊検査
−X線回折による試作品の品質評価−


 モノづくり支援センターには、熱処理用電気炉および真空ガス置換炉(いずれも最高温度:1100℃)が設置されております。これらにより、大気、真空、不活性ガス雰囲気での熱処理が可能であり、試作開発に活用されています。
 工業試験場では、これらのセンター設備利用のみならず試作品の試験評価について企業からのご相談が多く、併せて支援体制を整えているところです。
 本稿では、熱処理製品の非破壊検査のニーズに応え、X線回折法を適用して硬さ評価を行った事例や、その他の応用例を紹介します。熱処理製品の品質管理手法、ならびにその条件出しや試作のためのセンター設備利活用計画の参考にしていただきたいと思います。
 金属熱処理製品の品質評価は、通常、金属組織、硬さ、引張試験等による破壊試験で行われています。しかし、X線回折法によれば、金属中の結晶構造情報を取り出すことができるので、フェライトとオーステナイトや残留オーステナイトの定量評価ができ、非破壊で組織の情報が得られます。
 また、X線回折波形の拡がり(半価幅)は、結晶の歪みを反映しているので、硬さと相関関係があり、非破壊で硬さを評価することができます。
 さらには、回折ピーク位置のずれを測定することにより、表面近傍の応力−ひずみの状態を測定することもできます。浸炭焼入れや高周波焼入れした際に発生する表層の圧縮残留応力の評価には特に有効です。
X線回折の波形と材料特性との関係


担 当 機械金属部 鷹合滋樹(たかごうしげき)
専門 X線解析、破面観察
一言 X線の特徴を活かして上手に使いましょう。



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