無鉛和絵具の多色化
― 金ナノ粒子による透明赤の開発 ―


 九谷焼は「九谷五彩」と呼ばれる色鮮やかな上絵加飾に大きな特徴があります。従来の陶磁器用上絵具には、九谷焼に限らず、その成分として酸化鉛が使用されてきました。工業試験場は、消費者に対する安全性や環境への配慮のための国際基準の強化に備え、鉛成分を全く含まない無鉛和絵具の開発を行いました。
 「九谷五彩」のうち、青、黄、紺青、紫の4色は九谷焼独特の透明感を持つ絵具ですが、赤は弁柄(酸化鉄)を使用しているため不透明であり、透明な赤絵具の開発は以前から九谷焼の課題となっていました。
 透明感のある赤絵具の材料として着目したのは、金の微粒子です。金は塊の状態では黄金色ですが、微粒子の状態では赤に発色します。安定した赤の発色を得るためには、金の微粒子の粒径や濃度を制御する必要があります。これを制御する方法として近年話題になっているナノテクノロジーを利用しました。ナノテクノロジーとは、物質を原子や分子サイズのレベルで制御する技術のことです。ナノテクノロジーにより調整を行った金ナノ粒子(平均粒径15nm, 10億分の15メートル)を、着色剤として無鉛フリット(鉛成分を含まないガラスの粉砕物)に混合することで無鉛透明赤絵具の開発に成功いたしました。試作品は写真のとおりであります。現在、実用化に向けた量産試験等を行なっています。


担 当 九谷焼技術センター 木村裕之(きむらひろゆき)
専門 陶磁器
一言 無鉛和絵具を用いた九谷焼製品が広く普及することを期待します。



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